『ドラゴン桜』の三田紀房、最新作! 今度のテーマは「医学生のキャンパスライフ」

マンガ

公開日:2022/5/16

Dr.Eggs
Dr.Eggs』(三田紀房/集英社)

「大学生活は人生の夏休み」なんて言葉をよく耳にするが、医療関係の大学生は例外だと思っている。数年前、僕は看護師になるために学校に通っていた。そこで待っていたのは朝から晩まで詰め込まれた授業と、実習記録やレポートに追われながら試験勉強をする大変な日々だった。何度「寝てはいけない……!」と、セロハンテープで瞼を固定したことか。

 でも、いまとなっては「充実した青春時代だったなー」と感じる。かつての同級生と苦労話に花が咲き笑い合えるのは、大変だった時期があったからだ。

 きっと医師も、同じように感じる人は多いのではないだろうか。一般の大学とは異なる環境で過ごしてきた彼らにとって、医学生時代は大変だけど充実した6年間だったはず。『Dr.Eggs』(三田紀房/集英社)は、そんな医大を舞台に描かれる医学生の青春物語である。

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 山形県の国立出羽医科大学、入学式。新入生の中でひとり、浮かない表情をしているのは円千森だ。彼は自分の意思ではなく成績の良さと先生の勧めだけで、地元・埼玉からわざわざ山形の医大に進んだ。彼の心は「この選択が正しかったのか」という思いでいっぱいだった。

 この思いは、数日経っても変わらなかった。むしろ新入生向けオリエンテーションの後は、医師になる大変さを知り、気はどんどん重くなっていく。6年間も医学に携わる自信など皆無だった。

 医師や看護師を志す人の多くは「幼い頃からの夢だった」と語るだろう。ただ中には、円と同じようにさまざまな理由から“とりあえず医療の道に進む人”も一定数いる。ちなみに僕もそのうちのひとりだ。だからこそ円の、自分の進んだ道に戸惑う気持ちにすごく共感してしまう。

 このままだと円は早々に医学部を中退するのでは……なんてシナリオも想像できてしまうが、安心してほしい。彼はある出来事をきっかけに、医学の道を志す決意を固める。そのきっかけとなったのは、学校が休みの日。円はコンビニの前で出くわした教授の古堂真也に「予定がないなら一緒に来てほしい」と言われる。渋々ついていった場所は普通の民家の裏庭だったのだが、そこで待っていたのは……。

 本作は、医療漫画では珍しく「医学生」を物語の中心に据えているのが魅力だ。『ブラックジャックによろしく』や『医龍』といったメジャーな医療漫画は、豊富な医療知識を持った医師が主人公で、医師としての在り方や医療への考え方がすでに確立していることがほとんどである。

 しかし本作に登場するのは、医学知識も教養もゼロ、医師としての在り方も医療への考え方も確立していない人がほとんど。そんな彼らが困難を乗り越えようと奮闘する姿や、仲間と励まし合いながら医師への道を一歩ずつ進んでいく過程は、本作以外では見られないだろう。

 もともと医師になる気がなかった円が、この先どう変わっていくのか。どんな医師を目指すのか。できることなら円には「大変だったけど充実してたな」と思えるような大学生活を送ってほしい! そう思える漫画だ。

文=トヤカン

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