やっかいな粘着性の怒りは、「カラオケ」と「ジョギング」が効く?/ついイラッときても感情的に反応しない方法を1冊にまとめてみた
公開日:2022/11/30
やっかいな粘着性の怒り
あとになってから湧き上がってくる怒りというのもあります。
たとえば、口の達者な人と口論して、言い負かされたり、うまく自分の意見が言えなくて悔しい思いをしたとしましょう。
そのときはいったん引き下がったものの、家へ帰った途端に平常心をかき乱されるのです。「感じたことの半分も言えなかった!」「こう言い返せばよかった」と、悔しさがじわじわと滲み出してきて、それが怒りに変わっていったりします。
あとで、その場では思いつかなかった、いい反論の言葉が出てくるからやっかいです。まさか、相手に電話して、思い浮かんだ言葉を投げつけるというわけにもいきませんから、余計に悔しいし、腹が立ちます。怒りをぶつける相手がいない、まさに孤独な怒りです。悶々として、ベッドに入っても、なかなか眠れません。
そういうタイプの怒りは、なぜか粘着性を帯びています。なかなか頭から離れません。離れないどころか、次々と記憶がよみがえってきて、どんどんとエスカレートしてしまうこともあります。その仕組みを考えてみましょう。
家へ帰ると、「今日、どんなことがあったか」と、ふっと振り返る瞬間があると思います。そのとき、口論のことを思い出したりします。「感じたことを口にできなかった」「悔しかったな」という感情がジワッと湧き上がってきます。
「怒りの脚色」をしていませんか
人間は、ひとつの怒りを起点にして、さまざまな記憶を掘り起こすことがあります。「あの人は前にも同じことを言った」からはじまって、「そういえば、別の人も、私をバカにした」「ああ、悔しい」と怒りの波紋がとめどなく広がります。
そんなときはどうしたらいいでしょうか。
放っておけば、「怒りの連鎖」を生み出します。とっくに忘れていた心の奥底の怒りまで呼び起こしてしまいます。たったひとつの怒りに「脚色」が加わって、ときにはフィクションにまで膨らんでしまうのです。そうなると、もはや別の怒りです。
私はライフワークとして、映画作りをやってきました。監督をやりますし、脚本を書くこともあります。フィクションの世界の脚色は当たり前のことですが、連鎖が生み出した「怒りの脚色」はいただけませんね。
この「心のモード」を変えるために、何かをしなければなりません。何かあるはずです。それをやることで、気持ちが変わるようなことが……。
ひとつの方法として、ジョギングとかウォーキング、つまり走ること歩くことに集中することがあります。ジョギング、ウォーキングなどのフィジカル面でのリズミカルな運動によって、脳内にセロトニンという物質が出やすくなります。序章でも触れましたが、セロトニンは感情をコントロールするのに欠かせない物質です。歯止めがきかない感情にブレーキをかけてくれます。怒りに対しても、静める方向に働きかけてくれます。
怒りの特効薬「セロトニン」分泌法とは?
では、セロトニンの分泌を促すために、どんなことをすればいいのでしょうか。
お日様に当たったり、ヨガや気功をしたり、お経をあげたりするときも、セロトニンはたくさん分泌されるといわれています。ガムをかむのも有効です。それからマッサージでも、セロトニンは分泌されます。家族や親しい人に「ちょっとマッサージしてくれないか」とお願いしてみてもいいのではないでしょうか。
庭いじりもそうですし、ペットがいれば、夢中になって遊んでみるのもいいでしょう。
カラオケボックスで絶叫しながら歌うことも方法の一つ。大声でシャウトすればストレス発散にもなりますし、何より気持ちを切り替えるのに有効です。コロナが落ち着いたら試してみてはいかがでしょうか。
とにかく、雑念を払って集中しなければできないことをやることです。
「セロトニン、セロトニン」と口ずさみながら、違うことに集中しましょうよ。「怒りの脚本家」にならないように……。
<第6回に続く>