江戸川乱歩『人間椅子』のあらすじとは? 椅子となり女性に触れる感触に溺れる――容姿にコンプレックスを抱えた男の歪んだ愛

文芸・カルチャー

更新日:2023/2/1

 江戸川乱歩の代表作である『人間椅子』。内容は気になるけど、怖そうで最後まで読みきる自信がないという方もいるのではないでしょうか? やはり『人間椅子』というタイトルからは猟奇的な雰囲気を感じてしまいますよね。そんな方を対象に、短くわかりやすい形でストーリーを紹介します。

人間椅子

『人間椅子』の作品解説

 著者の江戸川乱歩は推理小説家として有名な一方、怪奇小説家という一面を持っています。

『人間椅子』は江戸川乱歩が専業作家として歩み始めた1925年(大正14年)に発表した怪奇小説で、『屋根裏の散歩者』『鏡地獄』などと並ぶ代表作です。この作品は著者の予想に反して大好評を博し、これを契機に乱歩はエログロナンセンスな作風へと舵を切っていきました。

 圧倒的な怪奇世界を展開させておいて「これは創作でした」とあっけなく打ち切る結末は不気味な余韻を残します。

『人間椅子』の主な登場人物

私:醜悪な外見にコンプレックスを持つ椅子職人
佳子:外交官の夫を持つ女流作家

『人間椅子』のあらすじ

 毎朝、夫の登庁を見送った後、書斎に籠り、読者からの手紙に目を通してから執筆に入るのが、女流作家「佳子」の日課だった。そんな佳子のもとに「奥様」から始まる原稿用紙の束が届けられる。それは「私」が犯した罪の告白だった。

 ある日、腕利きの椅子職人でありながら醜い容貌から蔑ろにされ、貧困の底で喘いでいた「私」に悪魔が囁いた。「外人専用のホテルへ納める椅子の中に入り、盗みを働いたらどうか」。すぐさま椅子を解体し、中に居住スペースを作成。そして納品される椅子。「私」は夜々椅子から這い出てホテルを徘徊し、窃盗を重ねる。

 ひと財産を築くに至った頃、「私」は椅子の薄革ごしに座った人間、とりわけ女性の感触を楽しむという、「椅子の中の恋」に耽溺していた。人間椅子となって様々な女性の感触に溺れる「私」だが、その心根では妙な物足りなさを感じていた。「同じ日本人に対してでなければ、本当の恋を感じることが出来ないのではあるまいか」。

 そんな折、椅子が売りに出されることを知った「私」は、ある可能性に心躍らせる。「ひょっとすると、日本人に買いとられるかも知れない」。その願望を叶えるが如く、椅子は日本人の官吏の手に渡る。そして、書斎に置かれた椅子を使うのは、もっぱら著作に耽る「若く美しい夫人」であった。こうして始まった夫人との蜜月に「私」は酔いしれる。椅子として夫人を愛する「私」。だがある時、夫人も椅子である「私」を愛しているのではないかと感じ、そして思い至る。「私」と夫人は相思相愛ではないかと。熱情に駆られた「私」はもう自分を止められなかった。自らを知ってほしいという想いを募らせ、夫人…佳子への手紙をしたためたというものだった。

 あまりの恐怖に書斎から逃げ出した佳子のもとに、「私」と同じ筆跡の手紙が届けられる。そこには、先に送った「私」の「創作」を批評してほしいと書かれていた。

<第41回に続く>

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