夏目漱石『それから』あらすじ紹介。愛を知ったニート、就活を決意!

文芸・カルチャー

更新日:2023/4/4

「明治時代のニートが就職を決意するまでの小説」と聞いて、興味が湧きませんか? 夏目漱石の『それから』には人妻との愛や、世間の常識との狭間での苦悩も描かれていますが、原作は全17章と短くはありません。そこで結末までのストーリーをわかりやすく紹介します。

それから

『それから』の作品解説

 本作は、1909年に朝日新聞で連載された夏目漱石による長編小説です。『三四郎』『門』とあわせて、著者・夏目漱石の前期3部作とされています。直接の繋がりはないものの、主人公の境遇から、本作は『三四郎』の続編として読まれ、同じく明治の全体主義社会での恋愛に苦悩する若者が描かれています。

『それから』の主な登場人物

長井代助:30歳独身。父の援助による家と金で暮らす高等遊民。
平岡常次郎:代助の親友。失業し、高利貸しから多額の借金を抱えることになる。
平岡三千代:常次郎の妻だが、かつては代助のことを想っていた。
長井得:代助の父親。代助の自由気ままな生活を黙認しているのは、政略結婚の駒にしようという企てがあるため。

『それから』のあらすじ

 長井代助は、父の援助で悠々自適に暮らす30歳。勉強も働きもせず暮らしていける代助にとっては、父が勧める財閥の令嬢との婚儀も関係のない話。天涯孤独になった知人の妹・三千代に好意を抱きながらも、親友の平岡と夫婦にさせることで彼女の幸福を願うという体たらくだった。

 しかし、平岡が横領の罪を被り辞職を余儀なくされたことで物語が動き出す。子どもの死を契機に病に伏せる三千代をよそに、平岡は家計を顧みず芸者遊び三昧。ふたりの仲を取り持った代助は後悔の念に苛まれ、平岡の不在を見計らって三千代を訪ねてはひそかに慰める。罪であると知りながら密会を重ねるふたりだが、後ろめたさから代助は平岡にすべてを打ち明け頭を下げる。

「三千代を譲ってほしい」と言う代助の言葉を平岡は了承するも、絶交を告げる。さらに代助は、政略結婚であった縁談を破談にし、人妻に手を出していた事実を知った父から勘当を言い渡される。実は、平岡は手紙でこれまでの経緯を代助の実家に報告していたのだ。恵まれた生活と家族を捨て、三千代との不貞の愛を選んだ代助は、今や世間と対峙せざるを得ない立場である。

「ちょっと職を探してくる」と飛び出していった代助は、これから襲いくる試練を思わせるかのごとく世界が赤く染まっているように感じ、不安を覚えずにはいられなかった。

<第49回に続く>

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