アンデルセン『マッチ売りの少女』あらすじ紹介。少女が最期に見たものとは? なぜ微笑みながら死んでいったのか…

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/18

 アンデルセンは『人魚姫』や『みにくいアヒルの子』など、日本でも馴染みのある童話を数多く書いた童話作家です。『マッチ売りの少女』も彼の作品の1つで、哀切なストーリーを覚えている方も多いのではないでしょうか。本稿では『マッチ売りの少女』について、作品の解説や登場人物、あらすじを紹介します。

マッチ売りの少女

『マッチ売りの少女』の作品解説

『マッチ売りの少女』はデンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが1845年に発表した童話です。アンデルセンは貧しい靴屋の生まれで、彼の母親はさらに厳しい貧困にあえいでいた過去があり、その頃の話をよく聞かされていました。マッチ売りの少女はそれらの話がもとになっていると言われています。

 デンマークは当時貧富の格差が大きく、アンデルセンは貧しくない人々を少女と対照的に描くことで、貧しい人を見て見ぬふりをする人々を批判しているとも考えられる作品です。

『マッチ売りの少女』の主な登場人物

少女:マッチを売り歩く貧しい少女。

おばあさん:少女の祖母。少女を愛してくれた唯一の人。

お父さん:少女の父。少女にマッチを売り歩かせ、時に暴力を振るう。

『マッチ売りの少女』のあらすじ​​

 大晦日の夜。雪の降り積もる街中で、ひとりの少女がマッチを売り歩いていました。少女はマッチを売り切るまで家に帰れません。マッチが売れていないと、酒に溺れたお父さんに暴力を振るわれるからです。しかし、街ゆく人々は少女に見向きもせず、目の前を通りすぎてゆくばかり。

 やがて夜も更け、寒さと空腹に耐えかねた少女は、せめて指先だけでも暖まろうとマッチに火をつけます。すると、マッチの火とともに暖かいストーブが現れました。暖まろうと少女はストーブに手足を伸ばします。しかし、マッチの火が消えると同時にストーブは消えてしまい、残ったのは燃え尽きたマッチだけ。少女はもう一本マッチをこすりました。次に現れたのは豪勢な料理でしたが、またしてもマッチの火とともに料理も消えてしまいます。

 もう一本火をともすと、現れたのは大きなクリスマスツリー。そして、そのツリーに飾り付けられたキャンドルの光が天にのぼり、星になって流れていきました。

「星が流れ落ちたのは、神さまのところへ魂が召されたということなのよ」

 そこで少女は亡くなってしまった、おばあさんがしてくれた話を思い出します。

 次の火で現れたのは、大好きだったおばあさんでした。しかし、マッチの火が消えてしまうとおばあさんも消えてしまいます。少女は慌てて、すべてのマッチを束ね火をつけました。おばあさんに、ずっとそばにいてほしかったからです。マッチの束が放つ光はとても眩いものでした。そして、光に包まれたおばあさんは少女を優しく抱きしめ、ふたりは寒くもなく、空腹もなく、心配もない神さまのもとへ昇っていきました。

 夜が明け、新しい年の朝。少女は口もとに微笑みを浮かべ、燃え尽きたマッチの束を抱えたまま凍え死んでいました。人々は憐れみましたが、少女がどんなに美しいものを見て、どんなに素晴らしいところへ召されたかを知る人は誰一人としていませんでした。

『マッチ売りの少女』の教訓・感想​​

 父親の暴力に怯え、冬の寒空の下凍え死んでしまう少女。かわいそうな少女を誰も助ける人はいませんでした。こういった見て見ぬふりをする人への批判も含まれた作品です。

<第10回に続く>

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