『アリとキリギリス』あらすじ紹介。キリギリスは改心すべき怠け者なのか? 幸せな人生とは何かを考えさせられる寓話

文芸・カルチャー

公開日:2023/10/3

 幼少時代、「もしもしかめよ、かめさんよ」のリズムに乗せてけん玉をしたことはないでしょうか? 油断や慢心を戒める数ある寓話のなかでも、特に『ウサギとカメ』は日本で広く知られており、童謡にもなっています。誰もが一度は聞き覚えがあるであろう本作のあらすじを、あらためて一緒に思い出してみましょう。

アリとキリギリス

『アリとキリギリス』の作品解説

 本作はイソップ寓話のひとつで、元は「アリとセミ」というタイトルでした。真面目に働くことの大切さや、将来のことを考えて努力することの大切さを教訓とする物語とされています。

 キリギリスが迎えるラストは因果応報的な死として描かれていますが、現代では仲直りし、アリから食べ物を分けてもらい改心するという展開が多いようです。

『アリとキリギリス』の主な登場人物

アリたち:夏の間から冬に備えて食料を集める働き者。

キリギリス:歌とバイオリンに興じている享楽主義者。

『アリとキリギリス』のあらすじ​​

 ある暑い夏の日、キリギリスは歌いながら得意のバイオリンを奏で、夏を謳歌していました。そこに食べ物を懸命に運ぶアリの行列が通りかかります。「暑い中、なぜ働いているんだろう」と思ったキリギリスはアリたちに尋ねました。すると、アリたちは「食料がなくなってしまう冬に備えて、食料を備蓄している」といいます。キリギリスにはそんなアリたちが信じられません。

「まだ夏なのに冬の準備なんて!」

 やがて秋が来てもキリギリスは楽しくバイオリンを弾いて歌い続け、対照にアリたちは冬の準備に余念がありません。そして、いよいよ冬が到来しました。

 食べ物が取れなくなり、夏、秋と遊び呆けていたキリギリスにはもちろん備蓄食料なんてありません。空腹と寒さで困窮しているキリギリスは、冬であるにもかかわらず暖かそうに暮らしている家を見つけます。その家をのぞき込み見たものは、キリギリスが音楽に興じている間も働き続けたアリたちの姿でした。やせ細り、餓死寸前のキリギリスは、アリたちに食べ物を分けてほしいと懇願します。しかし「夏に歌っていたなら、冬は踊ったらどうですか?」とアリたちは取り合ってくれません。

 アリに見放されたキリギリスは、空腹を抱えたまま凍死してしまいました。

『アリとキリギリス』の教訓・感想​​

 アリとキリギリス。どちらが幸せなのかどうかは評価が分かれるところであると思います。毎日一生懸命に働いて、冬に備えて備蓄もしたので冬を越せたアリは一見幸せそうですが、冬を越せなかったけれど好きな歌に生活を捧げることができたキリギリスも幸せであるようにも思えますね。

<第39回に続く>

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