チェイン店の魅力/絶望ライン工 独身獄中記⑥

暮らし

公開日:2023/10/25

絶望ライン工 独身獄中記

世の中には納得いかないことが大変多く存在している。
まず田舎ではヤンキーがモテる。
学生の本分である勉学を放棄し、欲望に流されるまま何の努力もせず喫煙パチンコbB出来婚、そして待っているのは家族と幸せに過ごすすたみな太郎での週末である。

そして東京ではモラハラ男がモテる。
モラハラ男とは、たゆまぬ努力によって東京でモテ属性である高年収を獲得した男達。
彼らが歩んだ荊の道は地獄である。
勉学、就活、営業成績。ずっと競争社会で生きて来た彼らにとって、人間関係は自分より格上か格下かを見極めるランクマッチだ。
格下の女性に対する容赦ない厳しさ、それを我々はモラハラ男と名付け讃えた。(※脚注)
上に媚び、下を侮るモラハラ男が唯一、ランクマを忘れ穏やかな気持ちで休息できる聖域が、ココイチである。

さらに、いじめっ子は皆出世する。
世の中の社長は皆元いじめっ子である。中には現役の方もいる。むしろ現役のほうが多いか。
この世界は狂気に満ちているな。つらいです
出世した人は皆安らぎを求めはま寿司に行く。たぶん。そうじゃなきゃ嘘だ。

ヤンキーもモラハラもいじめっ子も、行きつく先は外食チェインである。
そしてもちろん圧倒的平民階級である私もチェイン店が大好きです。
仕事で京都や名古屋に行っても串カツ田中に行くし、
例え海外でも迷わず吉野家やサブウェイに入ります。
あの安定感が心地よく、他では味わえない幸せを感じる。
「他では味わえない」が400店舗とか存在しているんだけど。

マッチングアプリで出会った人と初めて会う時、サイゼはダメだとか、晩杯屋行くなとか色々言われると思うが、私は全力で餃子の王将に行きたい。
「初めて会うのに王将なんて、手抜きじゃん。ちゃんとお店探しなよおじさん」
と思ったそこの婚活垢、ダウト。
これは手抜きではなくむしろ本気、全力で貴方がどんな女性かを知るために、私は敢えて王将に行くのです。

では何故王将が初デートに良いのか。
それはとっても美味しいからです。しかも安いし、すぐ出てくる。
「うわぁ、だからこの人結婚できないんだ、キモ」
と思ったそこの婚活垢、ダウト。

多分要因はそれ以外にもあります。悲しいなあ
というかチェイン店に行くから結婚できないのではなく、結婚できないからチェイン店に行くのです。
仕事終わりに薄暗い6畳で独り寂しく飯を食うより、日高屋の明るい店内が、人々の楽しげなおしゃべりの声が、たまらなく恋しくなる時がある。
そうしてついついそんな入りやすいお店の虜になっちまう。
つまり孤独の連鎖です。

でも断じて休日のショッピングセンターには行かない。
フードコートで過ごす家族連れやカップルの華やかな賑わい──それは婚活垢から飛んでくる罵詈雑言のクソリプより、我々の心を抉るのだ。

「うわ、それめっちゃわかる」
と思ったそこの婚活垢、DMください。

(※脚注)
インターネットでよく見る「高収入の男性を希望する婚活女性が、モラハラ男ばかりに出会う」問題に対する自分なりの回答

<第7回に続く>

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絶望ライン工(ぜつぼうらいんこう)
41歳独身男性。工場勤務をしながら日々の有様を配信する。柴犬と暮らす。
絶望ライン工ch :https://www.youtube.com/@zetsubouline