ジャガイモは火あぶりの刑に処されたことがある? 野菜の雑学や、植物の戦略などから学ぶ小島よしおさんの生き方とは〈私の愛読書〉

文芸・カルチャー

更新日:2024/1/24

撮影/松永卓也(朝日新聞出版)

 さまざまな分野で活躍する著名人にお気に入りの本を紹介してもらうインタビュー連載「私の愛読書」。今回ご登場いただいたのはお笑い芸人の小島よしおさん。

 小島よしおさんは、子どもと同じ目線で寄り添うお悩み相談の連載が年代問わず評判になり、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)が2023年9月に発売されており、すでに重版3刷と大人気だ。お悩み相談への回答には、1週間くらいの時間をかけて、芸人仲間に相談したり、本を読んだりした上で、大人にも勉強になるような解決策を導き出していたそう。その中でも、本による知識を子ども向けの文章にさらっと嫌味なく入れる技術には感心させられた。

 今回は、そんな小島よしおさんがおすすめする愛読書を、一般の人向け、子ども向けの2種類に分けて紹介してもらった。

(取材・文=奥井雄義)

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粘り強く生き抜く「雑草」は、実は弱いからコンクリートに逃げていた!?

弱者の戦略
弱者の戦略』(稲垣栄洋/新潮社)

――『弱者の戦略』(新潮社)という本を挙げていただきました。こちらの本を買ったきっかけと、どのような本なのか教えてください。

小島よしおさん(以下、小島):本屋で見て、タイトルがパッと目に入ってきて、ジャケ買いしました。中身もよくわからないまま買って読んでみたのですが、地球の生物のうち、一般的に弱いといわれる種がどうやって生き残ってきたか? その戦略を描いた本です。芸能生活において「生き残る」という言葉は割とよく使われるんです。そこでまず引っ掛かりましたね。

「雑草」について書いている章があるのですが、この本を読むまでは、雑草は強くて根性があって粘り強くてみたいな印象があったんです。でも、実は競争力がすごく弱くて、弱いからライバルがいないコンクリートとかに逃げた、という話があったんです。これを読んだ時に、「ああ、これは俺だな」と思いました。いわゆるテレビのバラエティーが強者の集まる場所だとしたら、そこでは僕は難しいかもしれないけど、子ども向けのライブやったりとか、野菜の歌を歌ったりとか、ライバルがいないところいないところへ行くことによって、自分の居場所を見つけることができた、という面がありましたから。雑草と同じ戦略で来てんじゃんと思って、背中を押された本ですね。

――ビジネス書としても読める、という口コミもありました。

小島:そうだと思います。たとえば、本書の中に紹介されている戦略の中で、「ずらす」というものがあります。サバンナの草食動物の中でも、背の低い草を食べる動物や、背の高い草だけを食べる動物など、きちんと棲み分けがされている。全く同じところにいると競争が起きて争いが生まれてしまうのですが、企業に置き換えた時にも同じことが言えると思います。

幼少期は自然と「花」のように咲く目立った子どもだった

――本の内容紹介を見ると、戦略の中に「目立つ」というものがありました。

小島:これはおそらく花の戦略だと思います。虫たちに花粉を運んでもらわないといけないので、虫を引き寄せるために、目立つ必要があるのです。

――小島さんは幼少期、かなり目立ちたがり屋だったと伺っています。そういった感覚と重なる部分はありますか?

小島:そうですね、戦略は考えずに、小学校の頃は本当にノープランでしたね。特に票を取りに行く必要もありませんから。

――自然と、花のように目立って、ということでしょうか?

小島:自然に咲いていましたね。

撮影/松永卓也(朝日新聞出版)

――お母さんがすごく陽気な方で、お父さんも民社党の職員として勤める傍ら、国政選挙にも6回立候補されており、そういった資質が自然と備わっていたのでしょうか?

小島:そうですね。色々な人に会ってやりとりして、という社交的な部分を親が当たり前にやっていましたので、「大人ってこんな感じなんだ」と子どもの頃は思っていました。でも、改めて大人になって振り返ると、両親は異常に社交的だったな、とは思います。

――この本は、どんな人に読んでもらいたいですか?

小島:社会に出てから読んでもらいたいですね。たとえば学生の時とかはそういった戦略などはあまり気にせずに、生きてほしいですよね。戦略というのは社会に出てからでも全然遅くないかなと思います。

ジャガイモは火あぶりの刑に処されたことがある!?

けなげな野菜図鑑
けなげな野菜図鑑』(稲垣栄洋/エクスナレッジ)

――反対に、子どもだからこそ、今読んでほしい本はありますか?

小島:『けなげな野菜』という図鑑ですね。さきほどの本と同じ稲垣先生が書いた本なんですが。誰もが知っている野菜の、あまり知られていないエピソードがいっぱい載っている本です。

――印象深いエピソードを教えてください。

小島:ジャガイモのエピソードですね。実は、ジャガイモが火あぶりの刑を受けたことがある、という話があります。芽に毒があるということで、ヨーロッパでは悪魔の植物と呼ばれていたんです。15世紀ぐらいに「悪魔の植物」として本当に裁判にかけられたんです。それで有罪判決を受けて火あぶりに処されたんです。僕の予想では、火あぶりにされた後みんなで食べたんじゃないかと思います。

 他に、ライブで話して皆が驚くのは、キャベツはもともとは丸くなかった、という話です。ケールみたいな縦に長い形だったんです。人間の事情で丸められたんですよね。

――どういう理由なのでしょうか?

小島:葉っぱがぎっしり詰まっていると、まずは美味しい。でもそれだけじゃなくて、運ぶ時に傷みにくかったり、虫の被害を受けにくかったり、という理由があるんです。出荷もしやすかったので、品種改良によって丸いものが残っていったらしいです。こういった雑学のような話がぎっしり詰まっている本です。

――ピーマンは細かく切ると苦くなりやすい、などの野菜知識を『小島よしおのボクといっしょに考えよう』でも書かれていました。何か野菜に思い入れがあるのでしょうか?

小島:「野菜の歌」を2011年くらいからずっと歌い続けていまして、歌っていると野菜のことを意識してしまいますから。

――きっかけは何なのでしょうか?

小島:先輩にネタの相談をした時に「ハマっているものは?」と聞かれて「ごぼう茶です」と言うと、「ごぼうの歌を作ればいいじゃん」と言われた、それがきっかけですね。

――野菜の中で、いきなりごぼうから始めるのがトリッキーだなと思いました。周りの反響はどうでしたか?

小島:「ゴーゴーゴーゴーゴーゴーゴボウ!」っていう歌だったので、結構ノリやすくて、一緒にやりましょうと言うと、皆さんやってくれて、会場も割と盛り上がりましたね。野菜の歌を歌っている人はあんまりいなかったので、いいかもと思い、当時は1年に1曲ずつ出していく形で増やしていきました。

――野菜はもとから好きだったのでしょうか?

小島:ごぼう茶の時は、野菜というよりは、健康オタクだった時期でして、ごぼう茶の本なんかも読んでいましたね。改めて、やっぱり野菜はいいなと思います。

撮影/松永卓也(朝日新聞出版)

<第40回に続く>