SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第31回「お正月」

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公開日:2024/1/27

 なんかもはや毎年言っている気もするのだが、私は正月が好きではない。兼ねてから言っているのはあの牧歌的な雰囲気、三が日全ての日本人の目尻が下がりっぱなしになるあの空気がどうにも肌に合わないのだ。なんでわざわざ一度止まらなければならないのだろう、動き続けている方が楽だろうに。一度止まってから再び動き出す方が、余程骨が折れるのよね。「ローギアの方がトルクが大きいってわざわざ教えているのは、車の仕組み以上に、生きる上でもしっかり役に立つからなんです」って教習所の学科の先生も言っていたし。

 ただ、好きではない理由が他にもあるような気がしていた。雰囲気だけにあらず、何かを億劫に感じてしまっているのだ。そのことに気が付いてはいたのだが、殊更に不便はないので取り立てて考えてみることもしなかった。しかしいい機会なので謎解きよろしく、お風呂に浸かりながら熟考してみた。すると熟考に至るまでもなく、すぐ答えが出た(多分世の中こういうことばっか)。

 挨拶だ。

 つまり「明けましておめでとう」だ。

 語弊を生まないように言っておくが、私は挨拶をとても重要視している人間なのでこれ自体が嫌いなわけではない。むしろ誰よりもしっかりやりたいと思っているし、これがまともに出来ない人間のことを普通に軽蔑している。あ、ねエねエ、なんかさ、挨拶が出来ない人間に限って、「シャイだから」とか言いがちよね。ん、だから? って思うよね。シャイは性質で、挨拶は行儀だから。同じ皿に乗せんな、シャイなりの挨拶しろよって思うよね。あと、「挨拶ってそもそも大事なんですかね」的な意見も、とっておきみたいな感じで出してくるよね。「もはや習慣ですよね。習慣化しちゃったそういうものに生産性ってあるんすか」とかね。インテリジェントな味付けしてくる人ってなんなの、君みたいな奴の頭は使うためにあるんじゃなくて下げるためにあんだよ、って思うよね。え、俺一体何に怒ってるの。待って、こわい。すみません脱線。

 すなわち(便利な言葉)、重要視しているからこそ、行為そのものにではなく、意味合いを大切にしたいと思うのだ。しっかりと労う気持ちを込めて「お疲れ様」を言いたいし、感謝の矢印と大きさを理解した上で「ありがとう」を言いたい。だから、私が「明けましておめでとう」に対して何が言いたいのかというと。

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しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。さらに2024年6月2日の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、大阪、山梨、香川、北海道、長崎を巡る初の野外ツアー「都会のラクダ 野外TOUR 2024 〜ビルシロコ・モリヤマ〜」(追加公演<ウミ>、<モリ>)開催する。

自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中


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