まつもとあつしの電子書籍最前線 2011年、電子書籍は進化したのか

2011/12/21

電子書籍元年から震災後へ
2011年の電子書籍事情を振り返る

「電子書籍最前線」と銘打ったこの連載は、今年の2月から始まりました。2010年のいわゆる「電子書籍元年」と呼ばれたムーブメントを受けて、実際に電子書籍に関わる人々が、どう考え、何を行おうとしているのか、直接現場で話を聞いてみようということで、ジャンル、そのビジネスの規模を問わず様々な人々にお会いしました。

今回は総集編ということで、2011年の電子書籍業界に何が起こったのか、について、記事を振り返りながら、今後の展望を探っていきたいと思います。

電子書籍市場と電子書店はどう進化したか?

北米でのKindleのブームやGoogleの電子書籍分野への参入を受け、日本でもにわかに電子書籍への対応が進みはじめたのが、2010年でした。出版社、印刷会社などが様々な協議会を設立し、国も三省懇談会を開き、電子書籍の標準中間(交換)フォーマットを策定するといった動きが相次ぎました。

2011年、そういった動きを受けて、電子書籍はどの位の盛り上がりを見せたのでしょうか?

(参考リンク)まもなく「日本を追い越す」米国の電子書籍市場:日経ビジネスオンライン

そして、まさにこの記事をまとめているときに、凸版印刷子会社のビットウェイから以下のようなリリースが届きました。

(参考リンク)新プラットフォーム向け電子書籍流通事業が累計100万ダウンロード達成!~ 国内の主要電子書籍ストアへ取次サービスを展開中 ~(PDF)

ここで改めて注意しなければならないのは、「電子書籍市場」そのものは、ずっと以前から米国よりも日本の方が先行して大きな市場を持っているという点です。ただし、それは携帯電話(いわゆるガラケー)での電子コミック、特に成人向け作品、BLやティーンズラブと呼ばれるジャンルが中心となっており、「実際の書店で手に取りづらい本が売れている」というのが現実です。

そして、上記のリリースで示された数字や期間(実質一年間と考えられます)を見ると、まだまだ一般書籍の市場は小さいと言わざるを得ません。

そして、この潜在的にはより大きな市場であるはずの「一般的な書籍」の電子化に、業界は期待を寄せる一方、AmazonやGoogleなどのいわゆる黒船(彼らをこう呼ぶ事には賛否ありますが)によってその市場の主導権が握られてしまうのでは無いか、という不安もあります。そうなることによって、本に関わるプレイヤー(著者・出版社・印刷・取次・書店など)の在り方が変わってしまう、そうなってしまっては困る、と考えた関係者も多かったはずです。

日本のコミックや書籍を多く販売することで知られた米国の大手書店チェーン「ボーダーズ」が2月に経営破綻したことも、Amazonなどのネット販売、電子書籍の普及が原因という受け止められ方もしました。ただし、それ以前に経営手法が良くなかった、という指摘もあります。

(参考リンク)ボーダーズはなぜダメになったのか? « マガジン航[kɔː]