まつもとあつしの電子書籍最前線 ミリオンセラー『スティーブ・ジョブズ』 はこうして生まれた

2011/11/17

100万部を超えた伝記「スティーブ・ジョブズ」(講談社の公式ページより)

10月24日、講談社より公式評伝『スティーブ・ジョブズ』が発売されました。発売前に重版が決まり、電子書籍も異例の売れ行きが発表されるなど、本書を巡っては翻訳書籍の歴史を塗り替える出来事が続いています。
一方で、「海外では1冊にまとまっているのに、上下巻となっていて価格が高いのではないか?」「紙の本と電子書籍で値段が同じなのはなぜ?」「カバーのデザインが海外版と異なるのは納得いかない」など、様々な反応が寄せられたともいいます。

そこで、「スティーブ・ジョブズ」の編集・刊行を行った講談社学芸局翻訳グループの柿島一暢さん、青木肇さんに、本書の権利獲得から出版に至る経緯を伺いました。お二人は本書の編集作業もタッグを組んで行っています。

異例続きの制作過程や、翻訳書・電子書籍に与えるインパクトについて現場から見えて来たこととは――?

前代未聞の販売状況

――――発売から10日(※取材は11月2日に行いました)が経ちましたが、これまでの手応えはいかがでしょうか?

柿島:予想以上の反響をいただいています。ちょうど今日また重版が決まって累計102万部となりました。村上春樹さんの「1Q84」が12日目で100万部(上下巻)に到達しましたが、それを上回るペースです。

――すごいですね。この102万部というのは紙の書籍と電子書籍を合わせた数字ですか?

柿島::いえ、紙だけですね。上巻だけで55万部(7刷)、下巻が47万部(6刷)となっています。あの「1Q84」を超えるとは正直思っていなかったので、正直びっくりしています。

担当の柿島一暢さん

――ジョブズ氏が10月6日に亡くなったことによって、否応なく注目が集まったというのは背景にあるとは思いますが、企画当初はどのくらいを想定されていたのでしょうか?

柿島:各巻10万部想定でした。ところが定価が決まり、アマゾンさんでの予約注文が始まると、予測をはるかに上回っていることが判明し、このままではすべての書店さんに配本ができないと、急遽「発売前重版」を決定したという経緯があります。

青木:紀伊國屋さんのパブラインを見ていても、発売から2日までの速報値がこれまで見たこともないような数字になっていました。25日だけで2500冊くらいいっていましたが、まだこれは、大阪より西や、北海道などには配本されていなかったような段階ですから、僕たちの感覚では前代未聞です。

――何がこれほどまでの販売に繋がった要因とみていますか?

柿島:大きく言えば、2つあると考えています。

まず宣伝の中でも繰り返し述べていますが、ジョブズ氏が認めた唯一の公認伝記であることです――ただし、ジョブズ氏自身は著者に対して「原稿を事前に見せてほしい」とすら言わなかった。いわゆる、単なる「よいしょ本」ではないということですね。

そして、やはりタイミング。亡くなる前から出版については公表されていましたが、ご遺族や権利者の意思で、当初11月21日予定だった全世界での発売が、1ヶ月早まったことが世界的な販売増に影響したのは間違いないでしょう。

――書店やネット上での反応などを見ていると、明らかにApple製品の愛好者以外の人たちにも支持が拡がっている様子が見受けられます。

青木:たとえば、ツイッターを見ていても「ジョブズ本を買ってくれると親が約束してくれたのに、実は上巻しか買ってくれないことが分かってがっかり」した子供さんとか、あるいは「ジョブズの伝記を探して本屋さんに入ったのに、うっかり別の関連本を買ってしまった」といった主婦の方のツィートがありました。なかなか配本が行き渡らず、地方の方が品切れを嘆いているなど、都市部のITに関心が高い男性以外にも幅広くお買い求めくださっているようです。