妻にするため少女を自分好みに育てるつもりが…奴隷に――谷崎潤一郎『痴人の愛』

文芸・カルチャー

2018/6/21

『痴人の愛 (新潮文庫)』(谷崎潤一郎/新潮社)

 28歳独身の河合譲治は、模範的なエリートサラリーマンである。女性経験もなく、真面目すぎる彼は会社で「君子」と呼ばれていた。世間を知らない少女を引き取って教育し、時期がきたら結婚するという願望を持っていた彼は、浅草のカフェの見習いの給仕であるナオミという15歳の美少女を見初める。彼は実家が貧しい彼女を引き取り、2人暮らしを始める。

 ナオミが16歳になった春、ふたりは入籍する。譲治は洋服、食事、習い事など、ナオミが欲しがるものは何でも与え、一流の女に育て上げようとした。ナオミの女としての肉体的な魅力は増してきたが、彼女は頭も行儀も悪く、浪費家で飽きっぽい女になってしまった。

 ある日譲治は、ナオミが男と立ち話をしているのを目撃する。彼はナオミが何人もの男と深い仲になっていることに気づき、彼女を家に閉じ込めた。それでも男と密会していることが分かり、彼は怒鳴ってナオミを身ひとつで追い出してしまう。

 しかし彼はナオミが恋しくて、また心配で仕方がなくなる。探してみると、彼女はダンスホールで知り合った男の家に泊まり、豪華な服を着て何人もの男の家を遊び歩いていることを知る。彼は呆れ果て、ナオミのことを忘れようとする。

 しかしナオミは、置いてある荷物を取りにきたという口実でしばしば譲治の家に戻るようになる。ナオミはますます美しくなり、譲治はあれだけ裏切られたのにもかかわらず、彼女の肉体の魅力には抗えない。自分の魅力を知っているナオミは、次第に彼を手懐けていく。

 譲治は会社を辞めて横浜にナオミの希望通りの家を買い、一緒に暮らし始めた。彼はナオミの肉体の奴隷として生きている。ナオミは今年で23歳になる。

文=K(稲)