男が囚われたのは砂地獄。脱出と失敗の先に待ち受けるものとは…安部公房『砂の女』

文芸・カルチャー

2018/6/28

『砂の女 (新潮文庫)』(安部公房/新潮社)

 31歳、教師の仁木順平という男は、8月に休暇を取って趣味の昆虫採集のために海岸の砂丘に行く。そこには今にも砂に埋もれそうな部落があった。終バスを逃した彼は勧められるがまま、そのうちの1軒の、深い穴の底にある民家に泊まることにした。その家では、寡婦がひとりで砂掻きに勤しんでいた。

 翌朝男が民家を出ようとすると、地上に上がるための縄梯子が外されており、男は家から出られなくなった。常に穴から砂を運び出さなければその村は崩れてしまうため、村人は砂掻きの人手を欲していたのだ。騙されて穴に閉じ込められた男は、埋もれる家で女と砂を掻き出しながら同居生活をすることになってしまう。

 女と肉体関係を持てば出られなくなると思いながらも、しばらく経つとふたりは関係を持つようになる。それでも脱出と抵抗を試みた彼は、廃材で梯子を作り、やっとのことで地上に出る。しかし逃走中に砂で溺れ死にそうになり、追手の村人たちに救出される。そして再び女の家へと閉じ込められてしまう。

 男は、しばらくは波風を立てないようにと穴の中で真面目に砂を掻いて過ごし、女とも夫婦のように馴染む。乾燥した砂の穴の中で水を確保するため、留水装置の研究に躍起になった。翌年になり、女が妊娠し、子宮外妊娠のため病院へと運ばれて行った。女が搬送された後、外に出るための縄梯子がそのままになっていた。しかし、男は脱走しようとはしなかった。

 男は脱走のことよりも、溜水装置の開発について村の者に話したいという思いでいっぱいだった。男の心は、すでにその部落の一員になっていた。

 7年後、男・仁木順平は失踪者として審判され、死亡が認定された。

文=K(稲)