『週刊ツリメ』「おっさんずラブをNetflixで観た話と、アイドルの卒業ほど悲しい物はないの二本立て」／【第32回】

　飛行機の中って大好きなんですよね。なぜかと言うと、映画やドラマがタダで観れるから。

　前の座席に液晶が付いているんだ。それで目的地までの到着時間が確認できたり、音楽だって聴ける。

　機能は携帯やパソコンの様な感じ。その中に動画を観れるサービスもある。少し前に映画館で上映してた物も見放題だし、ちょっと得した気分になる。これを読んでゲスいと思われても仕方ないな。

　8月下旬、ロサンゼルス旅行の帰宅便で何か面白い動画はあるかな？って画面をいじっていた。行きの便でデッドプール2を観たし、映画じゃない物が観たい気分になって、日本ドラマでもあったらそれにしよって思ったんだ。

　探してる途中で男性3人が横並びに写ってる写真が目に入った。背景は青空。スーツ姿で1人はおっさんだ。「おっさんずラブ」ってドラマだ。

　少し説明すると、春田創一(部下)の事を男二人が好きになるんだ。その二人ってのは黒澤武蔵（部長）と牧凌太（部下）。他にも登場人物は沢山出てくる。しかしこの三人が物語の進行のキッカケを作る。腐女子が好物そうな、ボーイズラブの物語だ。まさかこの僕がそんな物にハマる訳が無いと思っていた。しかしその考えは数時間後にぶっ壊された。

　テレビ放送してた時期は、数ヶ月前。その放映期間中、ツイッターのトレンドに「#おっさんずラブ」が常にあって、皆んなが面白いって巷で話題になってたのは知っていた。しかし僕自身、テレビ離れが深刻になっていて、最後にドラマを毎週観てたのは「華麗なる一族」だ。

　まぁ到着まで結構時間あるし、暇だから観てみるか～ってなって、画面を人差し指でタッチしたんだ。反応しない。トントントンって三連打したけど、画面は変わらない。思いっきり指の腹でギュって押したらやっと画面が切り替わった。

　ここからはネタバレになってしまうからドラマの内容は言わないが、めちゃくちゃ面白かった。何故こんなにも素晴らしいドラマを観て来なかったのだろうと、自分を責めた。上空1万メートルの位置に居る飛行機から飛び降りたい気持ちになったよ。はるたん(黒沢武藤が春田創一を呼ぶ時の呼び名)ならきっと、こんな僕を慰めてくれるんだろうな。

　ただ全話が観れた訳ではない。2話までしか収録されておらず、すげぇ続きが気になるところで話は終わった。

　日本に到着して、レンタルDVD屋さんでおっさんずラブを探したが、レンタルは開始されていなかった。膝を崩し、拳で地面を殴り、泣き崩れたい。そんな感情を抱き、1ヶ月の月日が経った。大学に向かう電車の中で、ニュースを読んでいたら、Netflixでおっさんずラブが10月1日から配信されると記事に書いてあった。泣き崩れていた僕は、顔を上げ、落ちた膝を持ち上げ、立ち直る事が出来たのだ。

　そしてその日が遂にやってきた。すぐにNetflixのアプリをインストールした。とりあえず「プランなんて後からでも変更できるやろ」って思って次へ進み、やっと観れるようになった。検索機能を使い、「おっさん」と入力した時点で、左上に「おっさんずラブ」が現れた。胸の鼓動が高鳴る。こんなにワクワクしている自分を見るのは久方ぶりだ。

　エピソード3をタッチし、ドラマの世界に潜り込んだ。何時間経ったか分からない。ただ知らぬ間に最終話のエピソード7を観終わっていたんだ。楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。そして僕は学んだんだ。

このドラマは人を好きになってしまう辛さを教えてくれたんだ。

「結局、幸せじゃないんですよ俺。春田さんと一緒に居ても苦しい事ばっかりです。」っていう牧のセリフ。

　そして……最終回を迎えてしまったよ。この何とも言えないもどかしさは何だ。喪失感というか、大事な物を失ってしまった気がする。

　これに似た現象が少し前に起きたんだ。

　それは2018年、アイドルさんの卒業ラッシュが凄いこと。中学生時代、応援していたアイドル達が居なくなってしまう辛さ。

　彼女達もきっとアイドルが好きだった筈だ。でも耐えられない事や辛かった事もあったのかな。色々考えると泣けてくる。あ、因みに僕は男性より女性の方が好きです。