3人が殺害を自白。真犯人は誰なのか――芥川龍之介「藪の中」

文芸・カルチャー

2018/10/15

『藪の中 (講談社文庫)』(芥川龍之介/講談社)

 藪の中で起こった殺人事件に関して、尋問を受けた7人の証言を並べた話。それぞれの証言は微妙に食い違い、真相はますます見えなくなっていく。「藪の中」という言葉の語源になった物語。以下あらすじ。

・木樵り(きこり)の証言

第一発見者。藪の中で男が仰向けに倒れており、胸元に傷があった。縄と櫛が落ちていた。

・旅法師の証言

事件の前日、男は馬に乗った女と一緒にいた。女の顔は見えなかった。男は太刀と弓矢を所持していた。

・容疑者・多襄丸を捕まえた男の証言

橋の上で唸っていたところを捕縛した。多襄丸は太刀と弓矢を持っていた。近くに男の妻のものと思われる馬がいた。

・殺された男の妻の母親の証言

男は金沢武弘という26歳の若狭の侍。娘(男の妻)の名前は真砂で、19歳。現在行方不明。

・多襄丸の白状

男は殺したが、娘は殺していない。昨日の昼過ぎに夫婦とすれ違った際に娘の顔に惹かれ、彼女を奪うことを決意した。

財宝があると嘘をつき、夫婦を誘導。藪の中にて男を縄で縛り、娘を強姦した。娘はそのまま立ち去ろうとした自分を止め、「二人の男に恥を見られては生きていけない。夫か、あなたか、どちらか生き残った方についていく」と言った。自分は男の縄をほどき、決闘の末に殺害した。しかしその隙に娘は逃げてしまった。

・真砂の懺悔(ざんげ)

男に強姦された後、夫に駆け寄ろうとしたが男に蹴られ、転んだ。夫の瞳には、蔑みの色が浮かんでいた。あまりのショックで気絶し、目覚めたときには男は消えていた。

私は夫と一緒に死のうと思い、足元に落ちていた小刀で夫を殺害した。そして夫の縄を切り、自分も死のうとしたが、死に切れなかった。

・霊媒による、男の死霊の証言

盗人は妻を犯した後、彼女を慰めながら「自分の妻になれ」と言った。妻は承諾し、藪の中から2人で出て行った。その際妻は、「夫を殺してくれ」と盗人に言った。

すると盗人は妻を蹴り飛ばし、自分に向かって「あの女を殺すか、助けるか、お前が決めろ」と言う。答えに迷っているうちに妻は逃走し、盗人も縄を切るなり逃げていった。

その後自分は、落ちていた小刀で自害した。意識を失う直前に誰かが来て、胸の小刀を抜いて逃げ去った。

文=K(稲)