【1分間名作あらすじ】親友を人質にし、走り抜けた青年の物語――太宰治『走れメロス』

文芸・カルチャー

2019/2/11

『走れメロス (新潮文庫)』(太宰治/新潮社)

 羊飼いのメロスは純朴で正義感の強い青年である。彼は妹の結婚式を挙げるため、シラクスの町へ買い物にきた。すると、昔は賑やかだったシラクスはとても寂しく落ち込んでいた。

 メロスは町の人から、王様が人間不信に陥ったため人々を虐殺しているという事実を聞き、激怒する。邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を暗殺しようと決意した彼は、短剣を携えて城へ侵入するもすぐに捕まる。さらに王に向かって「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ」と言い放つ。

 そうして死刑が確定したメロスは、妹のもとに帰って結婚式を挙げてやるために、3日後の日没まで猶予をくれと頼む。そしてセリヌンティウスという親友を人質として王の前に差し出した。人間不信の王は、メロスが親友を裏切って逃げるのもまた見ものだと思い、これを承諾する。

 メロスは一睡もせず走って家に戻り、妹の結婚式を挙げた。そして最後の1日の明け方、目を覚ましたメロスはシラクスへとひた走った。豪雨で増水した川の濁流を泳ぎ切り、襲ってきた山賊にも打ち勝ったメロスだが、ついに体力の限界を迎えて動けなくなってしまう。

 一度は諦めかけたメロスだが、それでも自分を信じて待っている親友のもとへ走り始める。血を吐いてボロボロになりながらも、彼は日没直前の瞬間、処刑台の前へと滑り込む。

 セリヌンティウスは、一度だけメロスを疑ったことを白状し、メロスもまた一度だけ友を裏切りかけたことを白状する。2人は一度ずつ互いの頬を殴り、そして熱い抱擁を交わす。

 この美しい友情を見た王はメロスを無罪にし、さらには「自分も仲間に入れてくれ」と懇願した。

文=K(稲)