男の言うちょいポチャって…「男と女の判断基準」/『生き恥ダイアリー』②

エンタメ

公開日:2019/9/22

『生き恥ダイアリー』(カレー沢薫/日本文芸社)

語るは恥だが役に立つ! 淑女たちよ、下ネタは男のもののみに非ず…。
奇抜だけれども知っていればいつか役立つ(かもしれない)、カレー沢薫の珠玉のコラムが開幕!

 別仕事で恐縮だが、当方は『ブスの本懐』と『ブスのたしなみ』(以上、太田出版)という、ブスについてのコラム集を2冊出している。

 他にもっと楽しいテーマがあったのではないか、と思うが、何を隠そうこのコラムだって最初は、「ブスをテーマに書いてください」と言われていたのだ。それを「もっと楽しい話をさせろ」と「エロ」になった経緯がある。

 つまり、各所からわざわざ書いてくれとオファーがあるということは、意外とブスには需要があるのでは、ということである。

 そんな中、ゴラクのBL好き女性編集部員(35)から、「ちょいブスだけど体はナイスバディ!! AV女優TOP10!」というまとめページが送られて来た。

 この記事は各自ググれば簡単に出てくると思うが、「安野由美」「大槻ひびき」「中村知恵」などが挙げられている。

 つまりこの方たちを「ちょいブス」に設定すると、大体の女が「産廃以下」になるというチョイスだ。危ないところだった。

 あれほど男が言う「ぽっちゃりがいい」と「ちょっとブスなぐらいがいい」を信じると、京都人が言うことを鵜呑(うの)みにした時ぐらいの大事故が起ると肝に銘じたはずなのに、また事故るところだった。

 男が「イイ」と言う「ぽっちゃり」は「巨乳」のことを指し、「ちょいブス」というのは「すごくカワイイというわけではないので、気を遣わずに済んで楽」ぐらいのレベルなのだ。

 片や女の考える「ぽっちゃり」とは「三桁台」、「ブス」とは「ドブス」のことである。

 よって女に「ちょいぽちゃ、ちょいブスなぐらいがいい」というリクエストをすると、人間を連れてくる可能性が3%ぐらいに下がる。

 かといって「カワイイ子を連れて来て」と言っても、何故(なぜ)か女は人間以外を連れて来る場合が多い。つまり人間を紹介してほしかったら、女には頼むな、ということである。そのぐらい、男と女の判断基準には壁がある。

 ひと昔前に「ブスブーム」というのもあったが、それはあくまで「エンタメ」として価値があっただけで、ブスが美人よりモテたかというと、そんなことはなかったぜ、という話であり、むしろブスといえども「ブームだからブスとつきあうぜ」などと言う男とつきあう必要はない。

 しかし、ことセックスに限っては、美人よりブス(ホンモノ)に軍配が上がっていることもままあるという。

 現に担当もこう申している。「ブスには遠慮なくぶつかれる気もしますし、美人にビビってたじろぐ心配もない。というか、エロに冷静だったり集中してない美人など何の価値もないです」

 確かに「観賞」しか許されないもの、つまり「お手を触れないでください」というものなら、見た目が良いに越したことはない。スカした顔でも「そこがまたいい」「クールビューティ」という評価ができる。

 しかし「お手を触れていいもの」、むしろ今まさにお手を触れている奴が「クール」という顔をしていたら楽しいだろうか。

 そもそも「ご自由にお触れください」と言われても、それが国宝だったら、いきなり持ち上げたり、手を突っ込んだり出来るかという話である。

 遠慮がち、もしくは「なんかあったら大変なので極力触りたくない」ぐらいに思ってしまうのである。つまり、開戦4秒後のまんぐり返し、アナルに指挿入とかできないのである。

 数十万円するものに対し、「これにチンチン入れたら気持ちいいのでは?」と思っても、なかなか行動に移す者はいないだろう。だが百均商品なら、「とりあえず入れて見よう」と実行に移せるはずだ。

 つまりセックスにおいては、ブスの方が遠慮なくやりたいことや思いついたことを実行できるのでいい、ということである。

 失礼な話だが、女もやはりイケメンとその他では対応が違うだろうから、その点では、あまり男女に差はないと思う。

 女もイケメンとセックスするとなると、「今日はイケメン相手だからがんばっちゃうぞ」と、アヘ顔ダブルピースになる女は少数で、無様(ぶざま)な姿を見せないように「終わるまで死んだフリ」をしてしまったりする方が多いのではないだろうか。そしてそんなセックスが良いものかというと、否である。

 つまりセックスに「恐縮」「遠慮」は、ご法度(はっと)ということである。

 しかし、自らの心構えはさておき、美人は自分の美しさを崩したくないからセックスに消極的で、ブスはこれ以上崩れようがないから積極的というのも、美人やブスに対する偏見であり、風評被害であり、「イケメンはクンニを嫌がる」というのも都市伝説で「いや、ベロベロいくし、むしろそこがメイン」と思っているイケメンもいるだろう。

 マグロのブスもいれば、毎回ばっちり白目を剥(む)いてくれる美人もいるはずだ。結局、問題は相手ではなく、相手によりプレイスタイルを変えてしまう自分、ということではないか。

 例え相手が石○さとみでも俺はまずアナルに指を入れる、という覚悟。ジャ○ーズでもベロベロに舐(な)めさす、という堅い意思が必要なのではないか。

 このように、ジャ○ーズになると、具体名を出せない上に伏字にまでしてしまう、というのがまずダメであり、「そういうとこやぞ」という感じだが、ケンカもセックスもやっぱり相手を見てすべきだ。美人、ブスで、対応を変えるのはいいことではないだろう。

 しかし「自称二十歳、どう見ても14歳」を「自称28歳、明らかに還暦越え」と同じ感覚で抱いていいか、というとそれは違う。

 相手を見すぎはよくない。だが、せめて年齢は見た方がいい。


【次回に続く!】