アリかナシか…?「ヤッてる最中に笑う」/『生き恥ダイアリー』⑥

エンタメ

2019/9/26

生き恥ダイアリー

著:
出版社:
日本文芸社
発売日:
『生き恥ダイアリー』(カレー沢薫/日本文芸社)

語るは恥だが役に立つ! 淑女たちよ、下ネタは男のもののみに非ず…。
奇抜だけれども知っていればいつか役立つ(かもしれない)、カレー沢薫の珠玉のコラムが開幕!

 担当曰く、やはりセックス中に一番萎える女の行動は「笑われること」だという。
「ウケる」みたいな笑いはもちろんのこと、それ以外の笑顔全般受けつけず、笑い声など出されようものなら殺意すら湧くと言う。

 しかし、「セックス中に笑う女」というのはプロでもアマでも一定数存在するそうだ。
 最中に突然、香川照之の「昆虫すごいぜ!」のことを思い出してしまった、というのならわかる。あれは昨日一家を惨殺されていたとしても笑う。

 そうでなくても、目の前で全裸の男が一心不乱に腰を振っているという珍事に気づいて、つい笑ってしまう、ということもあるだろう。
 だが、それ以外にセックスに笑い所などあるだろうか。

 しかし、世の中には「楽しいね、気持ちいいね」と相手のナイスプレイを讃える意味で笑顔な女もいるという。つまり非常に爽やかな女だ。
 確かに楽しさや気持ちよさを表現するには笑顔が一番だろう。しかしセックスだけは例外な気がする。

 中には、彼女にナイスプレイの笑顔をもらうと同じく満面の笑みになってハイタッチ、という男もいるかもしれないが、おそらく担当のように「萎える派」の方が多いような気がする。

 そういう私もスマイルセックスには萎える方だ。
 数年前から「女性向けAV」が台頭してきた。イケメンAV男優を起用しセックスに至るまでのドラマパートに力を入れているのが女性向けAVの特徴だ。

 私も「イケメンAV、大いに結構じゃないか」とさっそく購入してみたのだが、それが他でもない「スマイルセックス」だったのである。
 やたらと最中にお互い見つめあって笑うのだ。一体何がそんなに面白いのか、二人同時にカマキリ先生のことを考えているのか、と思ったが、おそらくこれは「恋人同士がクリスマスにセックスする」という内容のAVだったからだ。

 つまり「愛のあるセックス」を表現するのに「笑顔」が使われたのではないだろうか。

 他に笑う意味があるか。本当にカマキリ先生のことを考えていたのなら申し訳ないが、そういう意図だとしたら短絡的すぎる。

 その後同じレーベルで、つきあってない男女が勢いで一発ヤッてその後くっつく、という笑顔ナシの作品を見たが、こちらの方が2兆倍抜けた。

 やはり笑顔というのはAVでも萎えるのだ。これをリアルセックスでやられたら、「壊したい、その笑顔」と殴ってしまうかもしれない。

 しかし残念なことに、「スマイルAV」も結構あるのだそうだ。
 担当も「自分はみんなで談笑しながら変態女を代わる代わる犯す、みたいな乱交AVは確実に受け付けないのですが、よくあるので需要はあるのかもしれません」と言っている。
 よくあるのか。

 人生において変態女と乱交なんて滅多にあることじゃないだろう。もっと真面目にやった方がいいんじゃないだろうか。犯される変態女だって、もっと自分に集中してほしいはずだ。

 だが、よくある、ということは需要があるのだろう。
 では、どこ需要かと言うと、純粋にスマイルセックスが好きという人もいると思うが、「暗いのが嫌な人」向けでもある気がする。

 変態女を集団で犯すという内容を笑いなしで真剣にやったら相当エロいと思うが、同時にかなり暗くなると思う。抜いている最中はいいかもしれないが、それが終わると、エロかった分、その反動でどんよりしてしまう。

 エロでどんよりするのは辛(つら)い。それなら多少エロさは落ちても暗くなる要素がないスマイルセックスの方を選ぶ、という人もいるのではないか。

 実は私もそう言うタイプである。メチャクチャ抜けるが陰惨なエロ漫画と、痴女がパンツをかぶってアヘ顔ダブルピースしている漫画なら、アヘ顔を選ぶ。それほどエロで落ち込みたくない。

 つまり、変態女が犯される乱交AVは見たいが、暗い気持ちにはなりたくない、という人が「俺たち変態女を犯しているけど和気藹あい々あい」という雰囲気のものを選ぶのではないだろうか。

 しかしエロというのは、後ろ暗い方がエロいのは確かだ。特に日本人はそういう感覚な気がする。恋人とベッドでするより、出会って4秒で歌舞伎町の路地裏で合体する方がエロさだけなら上なのである。

 だから挿入して相手に「ナイスショット!」と笑顔になられるより、「いけないことをされている」という苦し気な顔をされる方が興奮するのではないだろうか。

 ちなみに欧米のAVでは、女優がそういう苦し気な顔をすると、レイプ物と思われてしまうので、あのように「オーイエス! オーイエス!」と「自分ノリノリでっせ」という演技で同意をアピールしている、と聞いたことがある。

 もしかしたら日本のAVの笑顔演技は、洋モノでいう「オーイエス! カム! カム!」と同じ役割を果たしているのかもしれない。

 相手が笑っていたら腹が立つかもしれないが、「このセックスに賛同してくれている」と思って、安心してみてはどうか。


【この続きは本書で!】

この記事で紹介した書籍ほか

生き恥ダイアリー

著:
出版社:
日本文芸社
発売日:
ISBN:
9784537262032