テキトーすぎてびっくり!「占いで結婚相手、決められちゃった」/『ざんねんな万葉集』⑥

文芸・カルチャー

公開日:2020/1/30

日本人は1,300年前からダメダメで美しかった…!
新元号「令和」の出典となったことであらためて注目を集めた万葉集。その収録歌数は、日本最大の4,516首!
中にはイマイチな歌もあって、カスな奴らが身勝手なイタい歌を詠んでいたりするのです。そんな万葉集から特にざんねんな51首を選抜。愛すべきダメ人間たちの歌に、思わずクスッと笑ってしまうはず!

『ざんねんな万葉集』(岡本梨奈:著、雪路凹子:イラスト/飛鳥新社)

占いで結婚相手 決められちゃった

三四一八 作者未詳

原文

可美都気努
佐野田能奈倍能
武良奈倍尓
許登波佐太米都
伊麻波伊可尓世母

和歌

上野(かみつけの)
佐野田(さのだ)の苗(なへ)の
群苗(むらなへ)に
事は定めつ
今はいかにせも

現代訳

上野の 佐野の田の苗の 群苗で(占った結果) 事〔=結婚相手〕は決まった さあどうしよう

解説

 この歌は、「結婚相手を占いで決められた」という衝撃的な歌です。そんな大事なことが占いで勝手に決められてしまうなんて、ざんねんを通り越して、勘弁してくれ状態ですよね。

「群苗」は伝未詳なのですが、おそらく田植えのときに、無作為に握った本数や、苗が長いか短いか、などで占ったのではと考えられています……超適当過ぎてびっくりです。絶対イヤなんですけど……。

 ただし、「勘弁してくれ」なのは、なにも占ってもらった側だけではなく、勝手に相手に選ばれてしまったほうは、もっと思いますよね。

 現代人には信じられないかもしれませんが、昔は、今よりもっと、占いが生活に密接に関係していて、重要視されていました。現代だと、占い好き=どちらかと言えば、女性のほうが多いイメージがあるかと思われます。ですが、昔は、男性も占いに夢中。仕事や行事も占いが超重要。当時は、占いが国の将来をも導く大切な道しるべでした。

用語

上野:現在の群馬県。

佐野:現在の群馬県高崎市東南のあたり。

群苗:未詳。占いの一種と考えられる。

:完了の助動詞。

せも:「せむ」の訛(なま)り。「せ」はサ変動詞の未然形。「む」は意志の助動詞。

<第7回に続く>