セリヌンティウスめっちゃいい奴/オズワルド伊藤の『一旦書かせて頂きます』④

小説・エッセイ

更新日:2020/11/19

畠中悠の癒し系のボケと、伊藤俊介のつぶやくようなシュールなツッコミがクセになる、お笑いコンビ「オズワルド」。 「M-1グランプリ2019」ファイナリストでもあるオズワルドの伊藤俊介が、漫才で見せる感性をいかんなく発揮するエッセイ連載。

連載第4回は、伊藤の弱点(?)「遅刻」について。

オズワルド
オズワルド 畠中悠(はたなかゆう/左)伊藤俊介(いとうしゅんすけ/右)

 もしも僕がメロスだったら、セリヌンティウス余裕で死んでたと思う。正義だ友情だとかとは全く別の理由で。

 

 暴君ディオニス王の怒りを買って、処刑確定して、セリヌンティウス身代わりにして、まじ頼むから故郷の妹の結婚式だけやらしてもらって、絶対に確実に間違いなく3日後には戻ると約束してめっちゃ遅刻すると思う。セリヌンティウスめっちゃ殺されると思う。

 距離+妹の結婚式+しこたま酒飲む=間に合うわけがないという答えを導き出すことが出来る。
普段からあらゆる時間に間に合わない僕にかかれば、導き出すことが出来るのである。

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 先日も「月刊芸人」(https://note.com/gekkan_geinin/n/n39cac31c2d26)というメディアの取材に遅れ、「お笑いナタリー」に伊藤遅刻の見出しを飾られた僕からしたら、導きなんて朝飯前なのだ。

 

 語弊がないように弁解させて頂くと、本当にどうやって信用したらいいってんだいと思うかもしれないが、僕は遅刻をする度に心の底から反省している。

 反省している奴はそんなに遅刻しないだとか、反省しているフリをしているだとか仰る方もいるが、そういった時は、あんまりそういうことは言わないで欲しい、あんまりそういうことは言わないで欲しいと強く強く思うのだ。

 反省はしているし、毎回二度とするもんかと本気で思う。思うのに遅刻してしまう時は遅刻してしまう。助けてよ誰か。いろんな医学も発展してるんだから。注射1発で手打ってもらえないもんかね。

 

 ただここで注目して頂きたいのは、僕が遅刻をする時は、大なり小なりで選んで遅刻をしているわけではないということ。これだけは遅刻常習犯からの最後っ屁だと思って聞いて欲しい。最後だからかいで欲しい。窓も開けないで欲しい。

 

 例として、これがM-1決勝だったら遅刻してきたか? または、これがさんまさんの番組だったら遅刻してきたか? などなど、遅刻をする度にこのような質問をしてくる方がいらっしゃる。

 僕は明日の仕事は大丈夫だべと思いながら眠りについたことはない。

 状況次第では見えない角度からも遅刻する。というか選べるほど器用ならば遅刻などしていないのである。

 遅刻は100%悪であり、マイバッグ風呂敷の奴くらいなんの言い訳も聞いてもらえるもんではないと思うが、こちら側としても、お相手側に少しでも意図的なものではなかったという意思を伝える義務があると思うのだ。なににもなりゃしないが、開き直るのは違うじゃない。

 

 それでも、それでも尚、いやいやお前は選んで遅刻しているよという方がいらっしゃるのであれば、どうか今一度思い出してみて欲しい。

 

 こっちセリヌンティウス殺られてんのよ。

 

 そうなったらこっちも、セリヌンティウスについての想像が止まらないのである。

 

 セリヌンティウスはめっちゃいい奴だった。

 小中の同級生で、なにかっちゃあよくつるんでた。

 僕の家で飼っていた羊が逃げ出した時も、セリヌンティウスは家の門限を破ってでも一晩中一緒に探してくれた。

 両親が離婚して、母さんと妹を僕が守らなくてはいけないと躍起になっていた時も、セリヌンティウスは、

 

『俺もいるから大人の男一人分にはなるだろ』

 

と肩を抱いてくれた。

 義務教育を終えた僕は、周りのみんなと同じように高校に進学するか羊飼いとして生きていくか悩んだ末、家庭の事情もあり後者を選択した。セリヌンティウスは高校に進学したが、彼が選んだ高校は農業高校だった。

 

『俺は高校に進学して農業を勉強する。いつかお前と自分達の牧場を持ちたいから。お前は経験を、俺は知識を蓄える。行き着く先は一緒さ。一人じゃないぜ』

 

 僕は涙が止まらなかった。

 ああなるほど、いつでもどんな時も、セリヌンティウスは僕の味方だったのだ。

 

 そんなセリヌンティウスが、僕の身代わりになり、僕が戻らなければ処刑されるのである。

 物心ついた頃からそばにいたセリヌンティウスが、なにかあったらすぐに駆けつけてくれたセリヌンティウスが、本当は僕の妹のことが好きだったセリヌンティウスが、僕が間に合わなければ処刑されるのである。僕が遅刻したら殺されるのである。

 

 それでも僕は遅刻するのだ。

 と、言いたいところだが、ここまで書いた上で胸を張って前言撤回させて頂きたい。

 

 僕セリヌンティウスの為なら遅刻しない。

 

 だっていい奴過ぎない? セリヌンティウス。

 いや、そりゃ冒頭はね? 僕がメロスだったらセリヌンティウス余裕で死んでたと思うとか言ったけども。だって知らなかったものそん時は。セリヌンティウスこんないい奴だったなんて。

 だってなにがすごいって、僕が死ぬほど遅刻するの知ってて身代わりになってるからねセリヌンティウスは。あたまおかしいよこれで遅刻したら。そら走るわメロスも。

 

 仕事を選んで遅刻しているわけではないというのは紛れもない事実ではあるが、セリヌンティウス絡みの話は別とさせて頂く。だってセリヌンティウスめっちゃいい奴だから。

 セリヌンティウスの為ならどんな現場も前乗りする所存。どの現場にもセリヌンティウスがいると思うことが、遅刻を無くす1番いい方法なのかもしれない。

 ただ、実際にはセリヌンティウスなど存在しないので、これからもうちの社長(相方)に頭を下げてもらうことは濃厚である。

 

 一旦辞めさせて頂きます。

オズワルド 伊藤俊介(いとうしゅんすけ)
1989年生まれ。千葉県出身。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020ファイナリスト。


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