対話を絵や線で「見える化」し共有・共感しよう!/グラフィックファシリテーションの教科書

ビジネス

公開日:2021/9/16

 グラフィックファシリテーションとは、絵や色を使って話し合いの様子を「見える化」しながらみんなで語り合い、一緒に探究する楽しさなどを実感させてくれるもの。いわゆる、「話し合い」をより豊かで面白いものに変えてくれる「魔法のツール」です。

会議などで、参加者の意見が深まらず、みんなが他人任せになってしまったことはありませんか? そんなシーンには、言葉では伝えきれない思いや雰囲気を、絵や線を使って可視化し共有するグラフィックファシリテーションが役立つかもしれませんよ。

NHK総合『週刊ニュース深読み』で、グラフィックファシリテーターとしてレギュラー出演していた著者が贈る、グラフィックファシリテーションを学ぶ決定版です!

※本作品は山田夏子著の『対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書』から一部抜粋・編集しました。

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書
『対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書』(山田夏子/かんき出版)

はじめに

グラフィックファシリテーションは、「話し合い」をより豊かで面白いものに変えてくれる「魔法のツール」です。

「話し合い」が起こる場面であれば、学校でも、家庭でも、自分一人のためでも、さまざまな場面で、活用することができます。

この本の中では、職場での「話し合い」に焦点を当てながらグラフィックファシリテーションについて、ご紹介しています。

その理由は、職場での「話し合い」は、競争に勝つために近道しようとしたり、役割に縛られて本音の共有が少なくなってしまったり、とかく、窮屈でつまらなくなりがちだからです。

本来「話し合い」は、もっと自由で楽しいものではないでしょうか?

グラフィックファシリテーションは、「正解のない問い」や、「簡単には答えが見つからない問い」を話し合う時にこそ、力を発揮します。
絵や色を使って話し合いの様子を「見える化」することで、みんなで語り合い、一緒に探究する楽しさや面白さを実感させてくれます。

この本を通じて、皆さんの生活にあるさまざまな「話し合い」が、ワクワクする未来を創り出す「はじめの一歩」になることを願っています。

時には自分自身との対話を、時には大切な家族との話し合いを、時には学校や職場での話し合いを、日常のたわいない一場面を“自分自身で面白くしていくツール”として、身につけてみてください。

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事
株式会社 しごと総合研究所 代表取締役
山田夏子

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

グラフィックファシリテーションって何?

▶▶▶「見える化」することで、「 話し合い」をより豊かで面白いものに変えてくれます。

「グラフィックファシリテーション」は、言葉では伝えきれない思いや雰囲気を絵や線を使って共有することで、共感を生み、話し合いを活性化し、自ら動き出したくなるエネルギーを作り出してくれます。

絵が苦手でも大丈夫! 話し合いの可能性を一緒に探求していきましょう!

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

絵が苦手でも、大丈夫!

グラフィックファシリテーションは、名前に「グラフィック」とつくことから、「絵が上手くないとできないよね…?」と思われがちですが、そんなことはありません!

グラフィックファシリテーションは、「きれいに描いた絵」が成果物ではなく、話し合いのプロセスの中で「活性化や共感、エネルギーをどれほど生み出せたか」といった「場」が成果物です。

たとえば、鼻がムズムズした時に、ティッシュを使って、思い切り鼻をかむとスッキリしますよね。グラフィックファシリテーションで描いた紙は、いわば、そのティッシュと同じです。

話し合いや会議の参加者が、なかなか表に現せない胸の内や、ムズムズした心情を、鼻をかむように思いっきり出しきるために描きます。鼻をかんだ後のティッシュを、大事にとっておく人はいませんよね。同じように、描きあがったグラフィックがきれいかどうかよりも、参加者が思いっきり話せたか、が大事なのです。

さぁ、話してくれている目の前の人に好奇心を向け、感じたままに描き出してみましょう! 何が、相手のアイデアや気づきのきっかけになるかはわかりません。楽しんで描き出すことからやってみましょう!

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

お話ベタでも大丈夫! 話し上手より、聞き上手が大事

「ファシリテーション」と聞くと、人前でキビキビと話し、場を仕切り、お話上手で司会進行ができる人でないとダメだと思っていませんか?

そんなことは、ありません!

グラフィックファシリテーションの場合、お話上手よりも、聞き上手が大事です。相手の話をどれだけ誠実に聴こうとすることができるか? これが一番大切なのです。

人前でしゃべるのが苦手な人でも大丈夫! むしろ、ファシリテーターは、でしゃばって質問したり、むやみに介入したりせず、話し手に寄り添って、そっと絵を描いているほうが参加者のためになります。

なぜなら、ファシリテーターがしゃべればしゃべるほど、参加者が話さなくなってしまうからです。ファシリテーターに任せておけばいいかと自ら考えることを放棄してしまうことだってあります!

グラフィックファシリテーションは、参加者同士で語り合うことを後押しするものです。参加者のマイクを奪わず、参加者同士の発言から気づきが生まれていくよう、話している人の「声」をどんどん描いていきます。
ファシリテーターではなく、描いた絵が「場」をファシリテートすることを目指しているのです。

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

「ファシリテーション」の意味を押さえよう!

この本の土台となる「ファシリテーション」の考え方について、押さえておきましょう。 「ファシリテーション」を直訳すると「促進する」という意味です。では「何」を促進するのでしょう?
ここでは、話し合いや会議の参加者が「目的」を自覚し、参加者が主体的に「場」で話し、主体的に決められるよう促進していくことを「ファシリテーション」と呼んでいます。

「主体的に場で話す」とは、参加者がはっきりと目的を持って、話し合いや会議に参加し、自ら話したいと思って話すことです。「自分のやりたいことだ」 「自分の話したいテーマだ」と思っていると、参加者は意欲的に場に関わります。

「主体的に決める」とは、参加者が心から納得し、自分で決める(合意する)ことです。自分で意志を持って決めることができると、人はエネルギーが湧き、主体的に動き出すことができます。

参加者が、自分の意志を持って参加し、話し、決め、動き出したくなるように促していくのが「ファシリテーター」です。

この本では、参加者の主体性を育むための、グラフィックを活用した「ファシリテートのやり方」や「ファシリテーターのあり方」について、お話しします。

対話とアイデアを生む グラフィックファシリテーションの教科書

<第2回に続く>

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