エアコンは消費電力より冷暖房の効果が大きいのはなぜ?/身のまわりのすごい技術大百科

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公開日:2022/4/8

 身近なモノのしくみが図解で丸わかり!『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(涌井良幸・涌井貞美著)で身近なモノに秘められた感動ものの技術について学びましょう。

 暖房時、エアコンは消費電力以上の熱を放出し、冷房時は消費電力以上の冷房効果を発揮する。どうしてだろう。

エアコンは消費電力より冷暖房の効果が大きいのはなぜ?

 普段、何気なく利用しているエアコンだが、不思議がいっぱいである。電熱器がないのにどうして暖房ができるのだろう。また、カタログには1キロワットの電気代で5キロワットの冷暖房ができるなどと書かれている。消費電力よりも冷暖房の能力のほうが大きいのだ。

 この秘密を解くために、まずエアコンが部屋を冷やすしくみを見てみたい。この原理はいたって簡単。水を肌に塗り、フッと息を吹きかけると清涼(せいりょう)感が得られるのと同様である。水が液体から気体に変化するときに気化熱を奪い、周囲の温度を下げるという原理を用いているのだ。エアコンでこの水の働きをするものを冷媒(れいばい)という。

エアコンは消費電力より冷暖房の効果が大きいのはなぜ?

 では、実際に冷やすしくみを見てみよう。エアコンは圧縮器(すなわちポンプ)と二つの熱交換器からできている。一方を凝縮(ぎょうしゅく)器、他を蒸発(じょうはつ)器というが、しくみは同一である。冷房の際、室内機の中の「蒸発器」で冷媒は蒸発して気化熱を奪い室内を冷やす。気体となった冷媒はポンプの力で「凝縮器」に運ばれ、室内で奪った熱を放出して液体になる。この繰り返しが「冷房」である。

 注目すべきは、ポンプは室内の熱を室外に運ぶだけ、ということだ。運ぶだけなら大きな電力は不要である。こうして、消費電力以上に、部屋の空気は冷やされることになる。

 次は暖房のしくみを考えてみよう。先ほどの冷房時のエアコンを逆に回してみる。すると、冷房時とは逆に、ポンプは室外の熱を室内に運ぶことになる。これが暖房のしくみである。電熱器など不要なのだ。冷房時と同様、熱を運ぶだけなので、消費電力以上に暖房効果が得られることになる。

 以上のように、ポンプは冷媒を介(かい)して室内から室外へ、また室外から室内へ熱を運ぶ役割をする。これは水槽の水をポンプで循環(じゅんかん)させるのに似ている。そこで、このしくみをヒートポンプと呼ぶ。このヒートポンプのおかげで、エアコンはたいへん効率のいい省エネ空調機になったのである。

エアコンは消費電力より冷暖房の効果が大きいのはなぜ?

涌井 良幸/涌井 貞美

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