怖かわいい猫たちが満載! 人気ホラー漫画家が描く猫とのホラーな日常

アニメ・マンガ

2018/8/9

『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』(講談社)

 蒸し暑い日が続く夏は、背筋がゾクっとするようなホラーな作品が恋しくなるが、今年は一風変わったホラー漫画をチェックしてみてはいかがだろうか。『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』(講談社)は日本のホラー漫画界を代表する伊藤潤二氏によって描かれた、新感覚なギャグホラー漫画である。笑いと恐怖は紙一重。そんな言葉がしっくりくる本作は、怖かわいい猫たちの姿が楽しめ、普段ホラー漫画をあまり読まない方でも手に取りやすい。

 ストーリーは伊藤氏の実体験がもとになっているため、猫の飼い主さんが共感しやすい“あるあるネタ”が多くちりばめられている。主人公のホラー漫画家J(=伊藤氏)は、もともと犬派であったが、婚約者が実家で飼っていた猫の「よん」を連れてくると言い始め、猫を飼うはめに。背中にドクロ模様を持つ「よん」は初め、Jの目には“呪い顔の猫”として映っていたが、毎日を一緒に過ごしているうちに、その模様も含め、Jは「よん」を愛しく思うようになっていく。

 そしてJは、「よん」がひとりで寂しい思いをしないようにと迎え入れた「むー」のことも愛で始めるようになり、徐々に猫好きの仲間入りを果たしていくのだ。「猫など認めんぞ!」と言っていたJが、徐々に猫の魅力に取りつかれていくコミカルな様は必見だ。

 なお、本作はホラータッチでありながらも、猫への愛が強く感じられる仕上がりとなっている。例えば、猫が椅子のキャスターで怪我をしないよう、独自の対処法を編み出したり、猫の扱いに慣れている婚約者に嫉妬心を燃やしながら、猫じゃらしの使い方をマスターしようと試みたりするJの行動はとても微笑ましい。そのため、禍々しいタッチであるのに思わず笑いが込み上げてきてしまうのだ。

 猫は思い通りにならなくても、かわいい。そんな、世の猫好きの想いが本作からはにじみ出ているように思えてならない。

 Jのようにもともと犬派だった人が猫を飼ってみると、猫派になったという声は周りでも多く聞かれる。それほど、人間を虜にしてしまう猫にはやはりホラーな魅力があるのかもしれない。王道な猫漫画にはないシュールな笑いは暑さでうだった心に元気も与えてくれることだろう。

文=古川諭香