『進撃の巨人』ロケ地の世界遺産「軍艦島」と 九州最後の炭鉱「池島」をめぐる 軍艦島周遊&池島散策ワンデイツアーレポ(後半・坑内編)

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更新日:2017/12/25

2017年秋に開催された『軍艦島周遊&池島散策ワンデイツアー』レポートの、後半です。(前編はこちら)
今回のツアーは、軍艦島・池島の“両島”を巡ることで、炭鉱を通して日本の150年を知ろう!がテーマ。前半では「軍艦島デジタルミュージアム」で展示を鑑賞し、船で軍艦島を周遊したあと、満を持して池島に上陸。かつて使われていた貴重な炭鉱施設を見学しました。そして島で唯一のお食事どころ「かあちゃんの店」でちゃんぽんをいただいたところで前半終了!後半は展望台や商店街を巡り、いよいよトロッコツアーに出発です!

13:00。「かあちゃんの店」を出て、徒歩10分くらいの展望台に移動します。

階段を上ると・・・・・・

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池島の建物越しに海を臨む絶景。「中央に見えているのが第2立坑(坑内の通気や職員の昇降、揚炭などを行うために垂直に掘られた坑道)のために池島で最後に作られたやぐらです。やぐらの下にはスカイツリー位の深さの穴があって、スカイツリーと同じくらいのスピードのエレベーターで昇降していました」(黒沢さん)。島内全部が貴重な炭鉱資料館のような状態ですね。そしてコンシェルジュの森山さんは、実際に建物の中で働かれていました。「現場まで、トロッコとマンベルトを使って2時間近くもかかっていました。でも、採れた石炭はキラキラ光って綺麗なんですよ!」(森山さん)。
続いてのスポットは、なんと実際に池島で暮らす方のお宅訪問!

とこちらは住民の方のご厚意で見せていただくことになるので、残念ながら室内の写真を撮ることはできません。畳のお部屋にふすまと天袋、水色に塗られたトイレやお風呂、と昭和の団地のようなレトロな内装でした。数人ずつしか入れないので、待っている間に黒沢さんのガイドを楽しみます。「数少ない自宅風呂のあるの居室で、2間+キッチン&トイレが基本だった中、4部屋にお風呂のついた広々した間取りです。こういった広めのお宅は松島炭鉱株式会社から直接雇用されていた職員用の住居でした」(黒沢さん)。
このあとは、高級職員用の住宅街から、教員や公務員用のKA棟や公住、独身鉱員の方々が暮らしていた男子寮、女子寮、そして現在も現役の炭鉱風呂「東浴場」など、生活の場を見学。

お宅拝見をした125棟

炭鉱風呂用の蒸気管や水道管が巡らされた島内

今でも入浴ができる炭鉱風呂「東浴場」

炭鉱アパートに隣接して建つ公営アパート

廃墟化が進行する初期の頃に建設されたアパート

独身炭鉱マンの寮『鏡寮』は250名収容のマンモス寮

こぢんまりとした女子寮跡

映画みたいな風景にディープな気分が高まります。でも、このあたりは使われていない建物も多く、実際にお住いの方々には少し寂しく感じる風景かもしれませんね。そして、島のメインストリートだった「新店街」をまわります。

唯一営業をしている「大島テレビ池島店」のある大通りはシャッター街のようになってしまいましたが、かつてはとてもにぎわいがあったそうです。「1番向こうにはお寿司屋さんがあり、2階のお座敷でよく宴会をしていましたよ」(森山さん)。
そして、現在の島内で唯一の宿泊施設、「長崎市池島中央会館」。

和室に大浴場、と旅館のような構成。館内の大浴場のほかに、前述の東浴場という炭鉱風呂にも入れます。このツアーでは宿泊はしないので、「ヤマの歴史資料展示会場」を見学しました。今となってはほかではなかなか見られない、貴重な資料が満載です。

中央会館を出たあとは、「新店街」の裏通りへ。裏通りには、現役の公民館のほか、かつての賑わいを今に伝えるボーリング場やスナックなどが並んでいます。

こちらは島唯一のボウリング場「池島ファミリーボール」。

今でも営業していると言われたら信じてしまいそうな雰囲気。危険の多いお仕事、お休みの日はここでご家族でわいわいと過ごし、ストレスを発散していたのでしょうか。そして、かつて鉱員たちを癒やしていた、歓楽街である「郷地区」へ。

海を臨む階段を降りると、左右に旅館やスナック、飲み屋などが立ち並ぶ路地に出ます。

パチンコ店「ニュー大海」跡

旅館「美松」跡

スナック跡

ツタに埋もれつつある建家は、駐在さんのご自宅だったとか

もっともきれいな形で残る「スナック千代」

最近まで営業していた「スナックマキ」跡

栄枯盛衰のわびしさと、かすかなときめきを感じる風景。観光イベントとして期間限定で飲食店の経営を復活させよういう計画もあったそうですが、やはりしばらく使用していない建物は安全を確保するのが難しく、断念したとのこと。そういうお話を聞くと、かえって一度はこの通りで飲んでみたいと思えてきます。
さて、街散策が終ると、いよいよ池島ツアーのメインイベント、坑内トロッコ見学です!14:20、まずはヘルメットとキャップランプ、リュックを装着し、坑内での注意点などの説明を受けます。

リュックにはキャップランプのための電池が入っています。私たちの見学は1時間弱ですが、実際に坑内で働いていた方たちは数時間使用するので、この大きな電池が必要だったのですね。そして、説明を聞き終えたら、トロッコへ乗車。

テーマパークのアトラクションのように見えますが、機関車は実際に炭鉱で使われていたもの。本日の参加者数では1台に乗りきれないため、2班に分れて時間差でまわります。では、出発!

島内の風景を眺めつつ、いよいよ坑内へ。

安全上の問題もあり、入れるのは坑内のごく一部。とはいえ、本当に当時使われていた坑道なので、迫るようなコンクリートの壁やどこまでも続くトンネルが、本物にしか出せないド迫力を感じさせてくれます。

下車してからは元炭鉱マンの方によるガイド付きで、ほとんど徒歩で坑内をめぐります。坑内で使われていた高速人車は、当時世界一速かったドイツ製。5~6キロほど進むと高速のマンベルト(人が後ろ向きに座って乗るベルトコンベア)に乗り換えて1.2kmほど昇っていったのだそう。それでも石炭を掘る現場までは約2時間かかったといいます。通勤だけで真っ暗闇を2時間とは、想像以上に大変なお仕事ですね。写真による解説が終ると、続いては採炭や掘削に使われる機器の紹介です。

恐竜の牙のようなドラムカッターは、石炭の層を掘削する機械。2億円もしたのだとか。

こちらは削孔機。希望者は運転体験もできます。ドドド!と大きな音をさせながら岩盤に穴を空けていると、炭鉱夫だった頃のDNAが蘇りそうです。その他、エアーマントという一時避難用のウェアや、ダイナマイトを発火させる機器、池島の子どもたちが書いた安全促進の習字やイラストの展示、発破の様子を撮った映像などを見学していきます。

ちなみに坑内での挨拶は、相手が誰であっても「ご安全に」。私たちも、次に入ったグループの皆さんと「ご安全に!」と挨拶をしました。こうして、一時間弱の坑内の旅を終えて、地上へ。

久しぶりの太陽・・・・・・といっても曇りですが、それでもまぶしく感じます。

最後は1班ごとに記念撮影。職員さんの撮った写真が、メンバー全員に配布されます。
ヘルメットとキャップランプを返却したら、最後に港に戻るバスに乗るまで、10分ほどの自由散策タイム。実は池島、そこかしこに猫さんたちがいるんです!

かわいすぎる~! と写真を撮っていたら、あっという間に10分経ってしまいました。半日歩き回った池島とも、とうとうお別れです。さよなら~!

長崎港つくまでの間は池島と軍艦島の未来について、ふたたび森山さん、黒沢さんがお話をしてくれます。「池島炭鉱は、エネルギー革命の直前に創業しています。かたや軍艦島は文明開化から高度成長の最後まで。2つの炭鉱を見ることで、文明開化から21世紀までの日本がまるごと見えてくるんです」(黒沢さん)。

ついでに黒沢さんの書籍『池島全景 離島の《異空間》』(三才ブックス)の宣伝もしたりして。と、お話を聞いているとあっという間なのですが、約50分ほどで、長崎港に戻ってきました~!

時刻は17時前。皆さん、そしてガイドの黒沢さんもお疲れ様です!

『軍艦島周遊&池島散策ワンデイツアー』は2017年の10月、11月の2期間にイベントとして行われましたが、2018年3月からはレギュラー化が決定!! 軍艦島デジタルミュージアムの入場料、乗船料、軍艦島周遊、池島ツアー、ランチ、坑内ツアー(記念撮影)、コンシェルジュさん&黒沢さんのガイド料、すべて含めて9500円也とかなりお得な内容です。ぜひとも参加してみてください!

取材・文・写真=長谷川京子

●軍艦島デジタルミュージアム

http://gdm.nagasaki.jp/

住所:長崎市松が枝町5-6
電話:095-895-5000
営業時間:9:00 ~ 18:00(最終入館17:30)
定休日:不定休

●かあちゃんの店
住所:長崎県長崎市池島町1597
電話:0959-26-1123
営業時間:7:30~18:00
定休日:祝祭日、不定休

●軍艦島コンシェルジュ

http://www.gunkanjima-concierge.com/

電話:095-895-9300
・ツアーは2018年3月より定期催行予定。
 3月は21日、22日、23日。以降はお問い合わせください

<参考>
 「池島全景 離島の《異空間》」「軍艦島全景」(ともに黒沢永紀著、三才ブックス刊)