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武蔵野をよむ (岩波新書)

武蔵野をよむ (岩波新書)

武蔵野をよむ (岩波新書)

作家
赤坂憲雄
出版社
岩波書店
発売日
2018-10-20
ISBN
9784004317401
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武蔵野をよむ (岩波新書) / 感想・レビュー

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かふ

武蔵野の雑木林は原生林ではなく人が伐採した後に椎やクヌギの落葉樹を薪として活用するために出来た人工林だった。里山の一部に組み込まれた人工林というわけだ。独歩が二葉亭四迷翻訳ツルゲーネフ『あいびき』の白樺の森の情景に感銘を受けてその武蔵野の雑木林に模したもの(ツルゲーネフというより二葉亭四迷の言文一致のスタイルの翻訳に)だ。そして『武蔵野』でも元の告白文である「欺かざる記」から伐採している箇所があるのだが、それが「若き恋の夢」を語り合った信子との逢瀬である。つまり裏ビデオならぬ裏文学(内面)の存在。

2019/02/17

フム

地域の生涯学習課が企画した赤坂憲雄氏の講演会「東北学から武蔵野学へ」があることをSNSで知り、参加の前に読んだ。独歩の『武蔵野』の舞台が渋谷辺りだったとは、まず驚いた。ゼミの学生と「なめ回すように」精読したことからの発見がある。山形で東北学を立ちあげた赤坂氏は震災直前に生まれ育った武蔵野に帰って来た。福島県立博物館長でもある著者は「震災でむき出しになったもの」があるという。新しい環境の中で自然に文学へ回帰し文学の力を信じたいと。これから武蔵野を舞台に見えてくるものは何なのか、武蔵野学のこれからに注目したい

2018/11/09

Shun

渋谷のNHK放送センターが建っているあたりはかつて監獄であった。その裏に住んでいた国木田独歩は散策を愛し、『武蔵野』というテキストを遺した。水車がまわり大根畑の広がる120年前の渋谷村。テキストの裏に周到に隠蔽されている、悲恋の相手に対する愛憎。独歩は自宅での独座とともに、渋谷村の雑木林や小道を歩きながらの思索を愛した。赤坂憲雄の筆は彼方此方へのび、小道の様に錯綜する。まとまった解はないが、断りがあるようにこれは試論であり武蔵野学の始まりの書である。読む者も独歩や赤坂と共に迷い道を楽しむのがよさそうだ。

2018/10/28

iwasabi47

独歩『武蔵野』とその元になった日記『欺かざるの記』を地学地理民俗学で補いながら精読する。明治30年辺りに独歩が武蔵野の東端だった渋谷は郊外・里山。北海道の原生林と武蔵野の落葉樹。歌枕と名所と二葉亭『あいびき』の変形と影響。恋愛と内面。やはり出てくる柳田國男と田山花袋のコンビ。ここ10年ほど自分が辿ってきた読書テーマに繋がっていて興味深かった。柄谷『日本近代文学の起源』の系譜にも繋がるが精緻で広範。新書でこれは素晴らしいと思う。

2018/10/31

七忍ミイラ

最近の関心もあってか、T・モートン的なエコロジー論にも近い雰囲気を纏った本として読んだ。それはある意味で日本民俗学の遺産なのだが。意図せずだろうが、考古学的読解が試みられており、武蔵野をめぐる言説が点検されている。主に国木田独歩の『武蔵野』『欺かざるの記』をテキストとして、武蔵野が「草原」から「雑木林」へと描かれ方が変化していく様を捉えている。そして、そこで描かれる「雑木林」の人工性を指摘している点もまた、面白い。しかもその人工の雑木林を舞台として人々の生活に着目する視点も興味深いものである。

2018/12/03

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