KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

インディアナ、インディアナ

インディアナ、インディアナ

インディアナ、インディアナ

作家
レアード・ハント
柴田元幸
出版社
朝日新聞社
発売日
2006-05-03
ISBN
9784022501875
amazonで購入する

インディアナ、インディアナ / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

新地学@児童書病発動中

これはお勧め。プロットは分かりにくいし、魅力的な登場人物が出てくるわけでもない。それでもこの小説は、読み手の心を強く揺さぶる強い力を持っている。これほど哀しみに満ちた小説はあまりないだろう。ノアが見たこの世界とオパールの手紙が交互に出てくる内容で、最初のうちは何を言いたいのか掴むのが難しい。それでも詩的な語り口が素晴らしく、私達が普段見ている世界を別の角度から見たはっとするような美しさが浮かび上がってくる。最後まで読んで、なぜこれほどノアが喪失の悲しみに暮れているか分かった時に、涙で視界が滲んだ。

2016/11/27

キムチ27

「優しい鬼」でハントのひとかたならぬ才に惹かれ選書。柴田氏訳、しかも巻末にもあるプッシュが熱い。【髪にコウモリがいる】という語彙の意が判ると作品の理解への層も更に厚くなる。食いつきは、低温‥なかなか脳に染み込まず呻吟。音読してみると案外、ふんわり誘われるかの如く、ノアがぼんやりと姿を現して来た。装丁の屹立する大ぶりの時計、振り子。まるで彼のモニュメント?と思わせられる。刻む時は社会とは相いれなかったろう、でもその痛みすら、もはや超越してきたのだろう・・美しい時間が流れたというのは情緒的過ぎる。現場で疾患

2020/10/28

安南

インディアンの土地という意味を持ちながら、すでに彼等はここにはいない。彼等と開拓者たちの夥しい血を吸い歴史を刻んできた大地は時を失くしたいと破壊された柱時計が埋められている。ノアの方舟は小動物の骨、昆虫の羽で作ったレンズ、一対の面など追憶の形見であるガラクタを乗せ、記憶の奔流に流され揺蕩う。告示の鴉は屠られ、舟は永遠に岸に辿り着くことはない。搔き集めた指の間から零れ落ちる記憶の断片のなんと輝かしいこと。失われたものこそ美しく愛おしい。静かな語りに胸が締め付けられ、目が潤む。比類なき愛の物語に出会えた。

2016/01/22

どんぐり

“元気で オパール”と署名の入った「いとしいノア」への手紙。そしてノアが語る物語。ノアは何年ものあいだ、いろんなものが見え、自分に向かって声を出して喋るようになり、精神に障害を抱えている。最初はぼんやりとしかわからないが、ノアの語りの世界にはいりこんでいくうちに次第に過去と現在が形をなしていく。今年東大を退官した柴田元幸氏の静謐で情感あふれる訳文が心地よい。

2014/04/04

みねたか

年老いた男の回想、独白と、女からの手紙を中心に綴られた作品。時系列もバラバラに絡まったエピソードがときほぐされる後半。劇的なクライマックスはあえてつくられていないが、数十年分の悲しみと諦念を、抑制された筆致で描いていて、しだいに心を揺さぶる。読み返したらまた違った味わいを見せてくれるに違いない。

2016/01/10

感想・レビューをもっと見る