『隅田川』慶次郎縁側日記 (朝日文庫)
『隅田川』慶次郎縁側日記 (朝日文庫) / 感想・レビュー
オールド・ボリシェビク
このシリーズ、読破するのは3冊目になる。元同心の隠居、その養子、岡っ引きを中心に話が進む短編連作。それぞれに描かれる人物像は市井に懸命に生きる男と女である。ちょいとした行き違いが仇となって、時には自棄になり、心に修羅を抱きそうになる男と女を、仏の異名を持つ元同心は優しく見守る。とはいえ、この作者、すべてを描き切らない。省略法というか、機微をさらっと描くので、よく読まないと結末がはっきりわからない。そんなぼかし絵のような技法がうまいと思った。
2023/09/23
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