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存在のすべてを

存在のすべてを

存在のすべてを

作家
塩田武士
出版社
朝日新聞出版
発売日
2023-09-07
ISBN
9784022519320
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「存在のすべてを」のおすすめレビュー

ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、塩田武士『存在のすべてを』

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年12月号からの転載になります。

『存在のすべてを』

●あらすじ● 平成3年に神奈川県で起きた二児同時誘拐事件。その30年後、当時事件を担当していた新聞記者の門田は知人の刑事の訃報をきっかけに、誘拐事件の被害男児が人気の画家になったことを知る。多くの謎を残したまま時効を迎えた事件にけじめをつけるため、門田は関係者への再調査を開始。日本各地を回り、地道な取材を続ける中、たびたび耳にしたのはある写実画家の名前だった――。

しおた・たけし●1979年、兵庫県生まれ。神戸新聞社在職中の2011年、『盤上のアルファ』でデビュー。『罪の声』で山田風太郎賞受賞、「『週刊文春』ミステリーベスト10 2016」国内部門第1位、2017年本屋大賞3位に。『歪んだ波紋』で吉川英治文学新人賞受賞。著書に『騙し絵の牙』『デルタの羊』など多数。

塩田武士朝日新聞出版 2090円(税込) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

折り重なる問いが導き出すクライマックス 「ちゃんとした理由なんてないんだよ。どっちで暮らすかなんか」。渦中の人物が…

2023/11/6

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【2024年本屋大賞3位】児童虐待の相談は年間20万件以上。『罪の声』作者・塩田武士が描く、児童誘拐された少年の空白の3年間の意味

『存在のすべてを』(塩田武士/朝日新聞出版)

 重厚長大な書物とはこういう本の為にあるような言葉だ。塩田武士『存在のすべてを』(朝日新聞出版)は、上質のミステリ小説でありながら、同時に、ミステリの定石を次々に覆していくような、志の高さと射程の長さが感じられる傑作である。塩田氏の代表作と言えば、第7回山田風太郎賞を受賞した『罪の声』(2016年)が度々挙がるが、子供が事件に巻き込まれる、という意味で同作と『存在のすべてを』には連続性がある。両作を読み比べてみるのも一興だろう。

 多面的な魅力を備えている本書だが、なんといっても設定の面白さに舌を巻く。まず、別々の場所で2人の児童が同時に誘拐されたら、という着想からして冴えている。誘拐を題材にした小説にはある程度定型があるが、塩田氏はそこをひとひねりしている。警察が最初の事件を「おとり」にして、ふたつ目の事件を解決しようとする展開も斬新だ。だが、2件目の事件では、警察の判断ミスによって犯人を取り逃す。被害当時4歳だった亮は行方不明になるが、3年後、彼の両親ではなく祖父母のもとに突如戻ってくる。

 実際に3年…

2023/10/28

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『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈/新潮社)

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まとめ記事の目次 ●黄色い家 ●君が手にするはずだった黄金について ●水車小屋のネネ ●スピノザの診察室 ●存在のすべてを ●成瀬は天下を取りにいく ●放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件 ●星を編む ●リカバリー・カバヒコ ●レーエンデ国物語

金とは、生きるとは何かを問いかける『黄色い家』

『黄色い家』(川上未映子/中央公論新社)

 同作は、芥川賞作家・川上未映子が2023年2月に発表したクライム・サスペンス小説。“黄色い家”に集う少女たちの危険な共同生活を描いた作品で、「王様のブランチBOOK大賞2023」や「第75回 読売文学賞(小説賞)」といった数々の賞を総なめにしてきた。

 物語は202…

2024/2/25

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存在のすべてを / 感想・レビュー

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パトラッシュ

事件と犯人と捜査を描く通常のミステリに対し、塩田さんは事件に巻き込まれ運命が狂った群像劇を主題とする。未解決に終わった二児同時誘拐事件から30年後、被害者のひとりが画家になったことから若き日に事件を取材した記者が再調査を始め、停まっていた時間が動き出す。思いがけず誘拐された子を預かってしまった夫婦が、情が移った子供を慈しんで育てる前半は息苦しいほどに読ませる。その夫婦をはじめ関わった人びとは、口外できない秘密を抱え必死に生きていく。彼らの苦しさ、切なさが収束していくラストの光景は、まさに魂のドラマなのだ。

2023/10/05

fwhd8325

誘拐事件が発端でありながら、事件を追及する楽しみ以外の要素が大きく存在を誇示していく。とても感動的な物語でした。鏤められた社会の闇が、物語を一層高めています。なかなか言葉で表現できませんが、とても心地よい気持ちです。

2023/12/06

hirokun

★4 神奈川二児同時誘拐事件をテーマにした犯罪小説なのかと思って読み始めたが、途中から写実絵画、子供へのネグレクト、家族愛、青春恋愛、美術界の裏幕など様々な要素を含みながら、最後は切ないストーリーを展開している。私の表現力がないため、この作品を読んでの感想がうまく伝えられないのが残念。

2023/10/11

のぶ

物語は平成3年に神奈川県内で発生した二児同時誘拐事件から始まる。犯罪小説かと思い読み進んだが、ストーリーは思わぬ展開を見せていった。誘拐事件から数十年経った現代、ある雑誌に1人の画家が過去の事件の被害者であったことが掲載されることから、新たな方向に進む。それを契機に当時、事件の記者を担当していた主人公の門田は、ジャーナリストの集大成として、過去に何が起こったのかを探り始める。冒頭の誘拐事件がずっと引きずっていて、ラストに進むにつれ切なさが深まり、いろいろな感想を抱ける優れた群像劇だった。

2023/09/21

やっちゃん

いきなりのクラシックな警察小説に興奮した。が、中盤以降はミステリより人間ドラマがメインでしたね。面白かったからいいけど。絵を、その絵を見せてくれと何回思ったか。逃亡生活って当人はともかく読む分にはドキドキでホント面白いよなあ。

2024/04/13

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