『脇役』慶次郎覚書 (朝日文庫)
『脇役』慶次郎覚書 (朝日文庫) / 感想・レビュー
ふう
「慶次郎縁側日記」のシリーズに登場する脇役7名を主人公にした短編集。作品では脇役でも、当然のことながらそれぞれが、その人の人生においては紛れもない主役です。慶次郎が手放しで『恵まれた人生』を送っていないように、どの人物も人や仕事やお金との縁に恵まれず、その日その日、何とか気持ちのやり繰りをして生きています。ささやかな喜びや矜持が、今にも崩れ落ちてしまいそうな彼らを支えています。そんな彼らを主人公にしたこの作品は、悲しみや傷みを抱えながらも、明日へと歩き出す彼らへの静かな応援歌ですね。
2024/02/05
オールド・ボリシェビク
「慶次郎」シリーズに登場するさまざまな脇役たちの立場、視点から物語を再構築していく短編連作とでもいおうか。それぞれが背負北原愛子ってきたもの、歩んできた道があらためてくっきりと描き出され、このシリーズに深みを与えているように思う。北原亞以子、省略の美学というか、物語を執拗に描くことをしない。さっと、筆をなぞるように物語を締める。その技に、最近は感心するようになってきた。
2024/01/28
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