過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)
「過ぎ去りし王国の城 (角川文庫)」のおすすめレビュー
10代にも中年にも染みる、祈りの物語! 宮部みゆき、傑作現代ファンタジー『過ぎ去りし王国の城』
『過ぎ去りし王国の城』(宮部みゆき/KADOKAWA)
この本を読んでいて、中学3年の春休みのことを久しぶりに思い出した。無事受験を終えた解放感と、春からスタートする高校生活への不安。中学生でも高校生でもない、気楽なようでちょっと心細いマージナルな人生の一季節を、6月15日に文庫版が発売された宮部みゆきの傑作ファンタジー『過ぎ去りし王国の城』(宮部みゆき/KADOKAWA)は、鮮やかにすくいあげている。
主人公の尾垣真(しん)は、推薦入試によっていち早く受験シーズンを終えた中学3年生だ。ある日、母親の使いで銀行を訪れた彼は、壁に貼られていた一枚の絵に目を留める。そこに描かれていたのは森に覆われた、中世ヨーロッパ風の古城だった。
ひょんなことから絵を持ち帰ることになった真は、奇妙なことに気がつく。画用紙に指を押し当てると、絵の中の世界をVRのように体感することができるのだ。そのうえ自分のアバター(分身)を描きこめば、広大な異世界を歩きまわることも可能だ。
真は絵の上手なクラスメイト城田珠美に声をかけ、リアルな山ツバメを描きこんでもらい、古城を目指…
2018/7/7
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過ぎ去りし王国の城 (角川文庫) / 感想・レビュー
bunmei
現実世界とは違う、もう一つの絵の中の並行世界に行き来きする中で、10年前の少女失踪事件と絡めた、宮部みゆきらしいファンタジー作品。でもそこに、現実世界で抱く不満に対して、自分を変えたいと思う気持ちを、並行世界に求めようとする葛藤を描き、人としての生き方やどう現実と向き合うかについて問いかけてきます。やはり、自分の道は自分の手で切り開かなくてはならないということなのでしょう。本も夢中になって読んでいると、本の世界に入り込んでしまうことありますよね。思春期真っただ中の中学生に手に取って欲しい作品です。
2019/09/08
エドワード
中学三年生の冬、尾垣真は銀行で拾った<古城の絵>の世界に<入り込む>ことが出来ることに気づく。同級生の城田珠美、マンガ家の助手パクさんと試みる、<絵の中>への冒険の旅。こういう話はアニメなどにもよく出て来るが、この現象の成り立ち、並行世界の構造といった不思議の部分をしっかり描くのは小説ならでは、の醍醐味だ。そして、この難解な理論構成、終盤の超複雑な展開についていける自分が、まだまだ頭が柔らかいかな、と感じる。平凡な真、孤独で凛とした珠美、宮部みゆきさんの描く中学生の魅力には毎回感動。終幕もさりげなくいい。
2018/07/23
ミヤッチ
かなり久しぶりの宮部みゆき。読みやすくて一気に読みました。おもしろかったです。
2018/07/16
まりも
分身を描くことで中に入り込むことが出来るヨーロッパの古城のデッサン。これはそのデッサンに閉じ込められた少女と現実の世界で起きた事件がクロスする物語。タイトルから明るいファンタジーかと思っていたが全然そんなことはなかった。最初は普通のファンタジーか?と思わせといて、そこから一気に普通のファンタジーには出来ないことをやっていく。その手法があまりにも見事すぎてあっという間に心を掴まれてしまった。現実に起きている問題とファンタジーの融合。宮部みゆきの描くファンタジーを思う存分堪能できる1冊でした。
2018/07/09
りゅう☆
真がふと手に入れた古城の絵から風が匂いか感じられた。そしてアバターを描くことで絵の中の別世界に入れることを知る。絵が抜群に上手なハブられ女子城田と共にこの絵の謎に迫る。絵に入るまでのドキドキ、絵の中に入った時の森のリアルさ、絵から出た後の不調。省かれることなく詳しく描かれている。そしてこの森で漫画家アシスタントのパクさんと出会い、城の中に少女がいることを知る。影は薄いがそこそこ幸せな真に対し、幼い頃母を亡くしいじめを受けている城田とある出来事で挫折を味わってるパクさんとの意見の食い違いが生じるも、少女を→
2019/06/04
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