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テスカトリポカ

テスカトリポカ

テスカトリポカ

作家
佐藤究
出版社
KADOKAWA
発売日
2021-02-19
ISBN
9784041096987
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「テスカトリポカ」のおすすめレビュー

麻薬密売×臓器売買×アステカ神話! メキシコと川崎を血塗られた儀式でつなぐ、超弩級クライムノベル

『テスカトリポカ』(佐藤究/KADOKAWA)

 北海道でホタテを食べた長州力は、「食ってみな、飛ぶぞ」とコメントしたという。その発言にならい、本書についてはこう言いたい。「読んでみな、飛ぶぞ」。

 前作『Ank: a mirroring ape』で大藪春彦賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞した佐藤究さん。3年半ぶりの新作『テスカトリポカ』(KADOKAWA)は、超弩級スケールのクライムノベルだ。メキシコの麻薬戦争から始まる物語は、インドネシアを経由し、やがて日本へ。背後には古代アステカ神の影がちらつき、〈死の笛〉が鳴り響く中、滅びた王国の神話がひもとかれていく。

 物語の中核を成すのは、ふたりの男だ。ひとりは、暴力団幹部の父とメキシコ人の母の間に生まれた土方コシモ。育児放棄され、日本語をほとんど話せないコシモは、13歳の時にある事件を起こして少年院に送られる。17歳で施設を出る頃、彼は2mを超える巨躯と人間離れした怪力を持つ青年に成長。両親を亡くし、身元引受人もいない彼は、木工技術の腕を買われてある工房で働くことになる。

 もうひとりの主要人物は、メキ…

2021/2/19

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第165回芥川賞は石沢麻依『貝に続く場所にて』、李琴峰『彼岸花が咲く島』、直木賞は佐藤究『テスカトリポカ』、澤田瞳子『星落ちて、なお』に決定!

 第165回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が発表された。選考会は7月14日(水)、都内で開催され、「芥川龍之介賞」は石沢麻依『貝に続く場所にて』、李琴峰『彼岸花が咲く島』に、「直木三十五賞」は佐藤究『テスカトリポカ』、澤田瞳子『星落ちて、なお』に決定した。

【第165回芥川賞受賞作品】

『貝に続く場所にて』(石沢麻依/講談社)

『貝に続く場所にて』(石沢麻依/講談社)

【あらすじ】 コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。静謐な祈りをこめて描く鎮魂の物語。 ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。人を隔てる距離と時間を言葉で埋めてゆく、現実と記憶の肖像画。

【プロフィール】 石沢麻依(いしざわ・まい)●1980年、宮城県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、ドイツ在住。2021年、「貝に続く場所にて」で第64回群像新人文学賞を受賞。

『彼岸花が咲く島』(李琴峰/文藝春秋)

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2021/7/14

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テスカトリポカ / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

紛れもなく第1級のエンターテイメント小説である。スケールの大きさでは、これまでにあまり類をみないノワール小説だろう。メキシコの麻薬密売組織、中国の黒社会、インドネシアを拠点とするイスラムの組織―これらの犯罪団を前にすれば、日本のヤクザ組織や警察までもが軟弱なものに見えてしまう。登場人物たちもまた破格に個性的だ。傑出した手腕を持つ心臓外科医「蜘蛛」、アステカの神々を奉じる組織者「調理師」、2mを超える体躯を持つピュアな「断頭台」コシモ。凄まじいばかりの暴力とアステカの神秘的な黒魔術、子どもの虐待と⇒

2023/08/30

starbro

佐藤 究、3作目です。本書は、圧倒的な暴力ノワールをアステカの神々が誘うクライム・ノベル、読み応えがありました。アステカの古代神が現代に蘇り、現人神コシモ降臨ということでしょうか?続編を希望します。 https://www.kadokawa.co.jp/topics/5433

2021/03/15

青乃108号

佐藤究、何て力量のある作家だろう。ようやく2日間の正月休みが取れたのでと軽い気持ちで読み始めたら最期、俺は【テスカトリポカ】に取り憑かれたように寝食忘れてぶっ通しで読み耽ってしまった。ストーリーの運びが見事である。血飛沫飛び散りまくり、骨砕けまくりの暴力描写は気が遠くなる程のリアリティーで描かれるが、ストーリーのテンポの良さでどんどん読まされてしまう。麻薬密売・臓器密売・アステカの神への生け贄など、言葉にすればとんでもなく重たい内容を、これだけ一気に読ませる佐藤究は凄すぎるだろう。

2023/01/05

パトラッシュ

メキシコでの凄惨な麻薬カルテル抗争に日本の無国籍児問題と薬物汚染。無関係の犯罪や社会問題がインドネシアで結びつき、日本を舞台とした臓器密売移植ビジネスに発展する過程は息苦しいほど読まされる。パルミロが祖母から伝えられたアステカの人身御供の神事が繰り返し語られ、相次ぐ殺人や破滅も神に捧げる生贄にしか思えなくなる。裏の世界の生態を描くノワール物の頂点といえる迫力だが、そこまで盛り上げながら僅かな裏切りで犯罪組織が瓦解してしまうラストは呆気ない。メキシコの大地を血に染める壮絶な復讐劇を期待していたのは私だけか。

2021/03/19

bunmei

これが直木賞?と思うほど、残酷で凄惨で、過激な描写を突き付けてくる。麻薬の密造、臓器の密売、マフィアの抗争等、裏社会に暗躍するマフィアの実情を、鋭いタッチで描いている。そこに、アステカ文明の神事を絡めることで、よりミステリアスな要素も深める中、世界を股にかけてのマフィアの死闘がリアルに展開されていく。これまでの直木賞とは一線を画し、超ハードボイルドな内容で、グロさも半端ない。550ページに及ぶ大作ながら、非情にテンポよく内容が展開していくため、次の展開が気になる筆致の巧みさには、直木賞の片鱗が覗える。

2021/08/26

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