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失われた時を求めて 2 第一篇 スワン家の方へ 2 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ P 1-2)

失われた時を求めて 2 第一篇 スワン家の方へ 2 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ P 1-2)

失われた時を求めて 2 第一篇 スワン家の方へ 2 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ P 1-2)

作家
マルセル・プルースト
鈴木道彦
出版社
集英社
発売日
2006-03-17
ISBN
9784087610215
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失われた時を求めて 2 第一篇 スワン家の方へ 2 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ P 1-2) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

まだ作品全体の構成はわからないのだが、何故ここで「スワンの恋」が語られるのだろうか。物語内の時間は、「私」が生まれる頃であるだけに「私」と直接「時」を共有しているわけでもない。しかも、オデットとの破綻に至るスワンの恋の顛末が、物語全体の中で果たす有機的意味も不明だ。もっとも、これは第3部で半ばは解決されるのだが。ただ、スワンとオデット、そして「私」とジルベルトといった対構造は理解できたとしても、第2部から第3部にかけての空白は今は語られていない。なお、第3部のエンディングはことのほか美しく散文詩のようだ。

2013/12/01

ケイ

「スワンの恋」スワンの恋に苦しむ様子、彼だけでなく複数の男を手玉に取るオデットの非情さで、第一部の コンブレー」で描かれたように、語り手の家族がスワン氏に寄せる同情と軽蔑とを読者はともにする。出自の卑しいヴェルデュラン夫人に代表されるようなスノビズム、思い上がり、見栄の強さや排他性は、貴族と言われる人達、例えばガランドン公爵夫人のような階層においても散見されるのに対し、スワンやレ・ローム大公夫人などのような自然さを持って社交界に存在する人もいるのだ。おそらく語り手はそのことでスワンへの同情を集めていく。

2015/10/05

夜間飛行

スワンがヴァントゥイユの曲に《見えない現実》を見出していく過程の、記憶と感覚の果てしない追いかけっこ。オデットの美しさを、ボッティチェリ描くチッポラとの類似から発見していく心理の切なさ。恋の話とヴェルデュラン家のスノビズム素描とが、透明な硝子を幾枚も重ねるように描き込まれ、それによって苦と楽の混じり合うスワンの恋の「囚われ」が、時代や社会を貫く問いとして浮かび上がる。束縛からの解放を最も恐れるのは彼自身なのだ。恋と社会を組み合せたバルザック的世界に意識や夢を導入する小説手法から、何となく源氏物語を思った。

2015/12/06

s-kozy

集英社文庫版2巻は第一篇 スワン家の方への「第二部 スワンの恋」と「第三部 土地の名・名」。スワンの恋は語り手が生まれた頃のスワンの恋の話。他者からの聞き書きという形で三人称で語られているはずが、時折、語り手の私が顔を出し、読み手のこちらが戸惑うこともある。それはさておき、恋愛対象のオデットに翻弄されるスワンのなんと人間臭いことか。嫉妬から疑心暗鬼になる心の動きがよく分かる。恋は盲目ですね。所々で出てくる芸術に関する描写から「作者は芸術を使って何かの真実を表現しようとしているのではないか」と思い至る。

2015/09/30

たーぼー

スワンとオデット。剥き出しになった二人の姿に「浮世離れしてるなあ」と思いつつ、全ての嘘をはぎ取られた真の人間の形を見てしまうのだ。合わないタイプ(と思われる?)異性に惹かれてゆく様というものは理屈では到底、説明のつかない恋愛の盲目と神秘性の表れであり、一方で物語的に後の嫉妬と愛の衰えを期待せざるを得ない。ピアノ曲で結びつけられる両者、肉体的所有を意味するカトレアの隠喩など表現の鮮やかさも見事。第三部「土地の名・名」は二人の静かな着地点と見て良いのか?思考すら拒まれトロトロになる感覚。溜息しか出てこない。

2015/07/22

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