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おやすみの歌が消えて

おやすみの歌が消えて

おやすみの歌が消えて

作家
リアノン・ネイヴィン
越前敏弥
出版社
集英社
発売日
2019-01-04
ISBN
9784087734959
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「おやすみの歌が消えて」のおすすめレビュー

「じゅうげき」で兄は死んだ――6歳児の視点で描く、銃乱射事件の傷

『おやすみの歌が消えて』(リアノン・ネイヴィン:著、越前敏弥:翻訳/集英社)

 幼い子どもを主人公にしたシリアスな小説で、読者が違和感を覚えることが多いのは、語り口があまりにも大人びてしまっているからである。子どもが考えるはずもない政治性を主張し始めたり、性格が完璧すぎたりして「小さな大人」を見せられている感覚に陥ってしまう。

 その点、『おやすみの歌が消えて』(リアノン・ネイヴィン:著、越前敏弥:翻訳/集英社)は、惨劇に巻き込まれた家族の物語を無垢な6歳児の視点で描き出すことに成功している。アメリカの銃乱射事件を題材にしながら、政府や社会についての意見は読者に委ね、あくまで子どもの心象が描かれていくのだ。そして、どんな大きな事件でも、大切にされるべきなのは関係者の気持ちなのだという当然のことに立ち返らせてくれる。

 6歳児のザックは両親と9歳の兄・アンディと暮らす普通の小学生だ。アンディは意地悪な兄だったが、時折ザックに優しくもしてくれた。4人はどこにでもいる、幸せで平和な家族だった。ところが、日常は突然終わりを告げる。ザックたちの通う学校で「じゅ…

2019/2/1

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おやすみの歌が消えて / 感想・レビュー

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あじ

銃乱射事件で命を奪われたアンディ。弟のザックは現場となった校舎に居合わせ、鳴り止まぬ銃声を聞き飛び散った赤い飛沫を目撃する。悲しみに暮れる両親の傍らで、ザックは悪夢にうなされ夜尿を繰り返し人形の耳を齧り出す。母は彼の異常を察知しつつも、犯人とその両親に憎悪のエネルギーを浴びせることに懸命で、彼を慮る余裕を失ってしまった。兄への罪悪感と後悔の念に押し潰されそうになりながらも、家族の崩壊を食い止めようとするザック。その純粋で真っ直ぐな六才の行動に、邪念を抜かれていく大人たち。新人作家の会心はK点を越えてきた。

2019/04/02

しゃお

【再読】二度目だから大丈夫と思ってたけど、やっぱり号泣。誰もいないところで読んで良かった(笑)。そして再読でもやはりザックの気持ちや想いがストレートにダイレクトに伝わってきますね。そんなザックのような子供たちに恥ずかしい姿を見せることのない大人でありたいし、ザックのような、そしてザックの家族や加害者の両親たちにこのような悲しい想いをさせない世界を作っていけるようになって欲しいものです。

2019/07/27

信兵衛

米国で度々起きている銃乱射事件に対し、ある人物は銃を持った警備員を学校に配置すればよい、と言ったそうですが、そういうことじゃないのです。銃で殺し合うというような悲しみを、そもそも引き起こしてはいけないのだということを、本ストーリィは強く訴えています。

2019/02/08

しゃお

銃乱射事件によって兄アンディを失ったザック。息子を失った悲しみに暮れる両親。なかでも銃撃犯とその親への怒りに満ちた母親の言動は家族をバラバラにし、ザック自身も怒りや哀しみなど様々な感情に揺り動かされます。それでも大好きな両親と一緒に暮らすために〈幸せのひけつ〉を求め、決して大好きだとは思っていなかった兄かも知れないけど、その兄の死によって誰かを愛したり誰かの為になりたいと純粋に願い行動するザックの姿に応援しつつも何度も胸を打たれます。そして最後の家族の言葉に思わず号泣も、優しい気持ちに包まれる物語でした。

2019/03/06

タカラ~ム

ある日突然小学校を襲った銃撃犯。6歳の少年ザックの兄アンディが犠牲となる。アンディの死、銃撃犯の正体、すべてがザックの家庭を壊していく。悲しみにくれ、やがて復習に凝り固まり、狂気を帯びてくる母の姿。彼らに同情するようで、実際には野次馬でしかない世間。被害者家族の悲劇と崩壊が、6歳の子ども目線と言葉で描かれていて、その純粋なストレートさが読んでいて胸に刺さってくるように感じる。

2019/05/28

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