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伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

伊豆の踊子 (新潮文庫)

作家
川端康成
出版社
新潮社
発売日
2003-05-05
ISBN
9784101001029
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ジャンル

伊豆の踊子 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

高校1年生の時の現代国語の教科書が本作との最初の出会い。その頃は、前途洋々たる青年が踊子に寄せるほのかな恋心の物語として受け止めていたように思うが、今これを読むと、その印象は大いに異なったものとなる。すなわち、主人公であり語り手の「私」の、一高生としての選良意識が強く打ち出されていると感じるのである。二人の間に生じるのは恋心などではない。踊子の側にはかすかにそれはあったかもしれないが、「私」が彼女を見る眼差しはあくまでも踊子である。彼女には薫という名が与えられているのだが、「私」にとっては、そうした⇒

2022/09/15

だんぼ

二十歳の私は、自分の性質が孤児根性で歪んでいると、厳しい反省を重ね、その息苦しい憂鬱に耐え切れないで伊豆の旅に来ているのだった

2024/01/28

のっち♬

表題作は踊り子の様子や青年の感情変化が瑞々しく綴られており、「花のように笑う」「何も残らないような甘い快さ」といった新感覚派ならではの言葉選びにはっとさせられた。『温泉宿』の出だしも独特の言い回し。こちらは人物造形のコントラストもあって、挿話が並列されていても筋がはっきりしている。『抒情歌』は著者の死生観が反映された作品で、美しくほのぼのとした語りは時々童話を読んでいるような気にさせる。『禽獣』は「彼」の怜悧な眼差しが印象的で、抒情と非情の共存は不気味に迫るものがある。静かに死を直視し続ける著者を感じた。

2021/01/31

yoshida

恐らく初読みの川端康成。短編4編を収録。特に標題作と「温泉宿」が印象に残った。まずは標題作。20才の主人公は伊豆の温泉地を旅行中に旅芸人の一座と交流を持つ。その中の踊子とお互いに淡い思慕が芽生える。踊子は14才であり、まだ大人と呼べない未成熟さがある。碁盤を挟んでの、ふとした羞恥。お茶を出す際の震え。二人の瑞々しさが一服の清涼感を与える。「温泉宿」では風情が一変し、女性達の生々しさ、仄白く闇に蠢く肉感的な美しさと哀切に引き込まれる。ある意味、戦前の日本のおおらかさと美しさ、逞しさを見たように感じた作品。

2018/09/17

關 貞浩

『禽獣』に描かれた、人々が愛と呼ぶ感情の本質的な醜悪さに戦慄する。気に入った愛玩動物たちに愛情を注ぐ一方、よい個体だけを残すため生まれた子犬を間引き、不注意で小さな生き物を死なせ、見殺しにし、命がゴミになってゆく様子が何の衒いもなく描かれる。かつての愛人との心中未遂も同じこと。人生には何も残らないと悟ってしまった結果の、美しいものと戯れる快楽だけが生きるうえでの関心事となるような破滅的な倦怠。消費されてゆく命や愛の虚偽を透かし見る渇いた眼差し。人間が生きるということの本来的な残酷さを痛烈に思い知らされる。

2018/08/09

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