学問 (新潮文庫)
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学問 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルも、内容も、およそ山田詠美とは思えない。少なくてもこれまでに読んだ彼女の小説14冊とは大いに趣きを異にしていた。仁美を語り手に心太、千穂、無量の4人組の小学生時代から高校卒業のあたりまでを実に爽やかに、そして鮮やかに描き出してゆく。作家の感性は瑞瑞しく、これを読んでいる読者である私たちもまた、かつて抱いていた少年、少女の世界をしばし取り戻す。最初に淡々と登場人物のうちの一人の死を告げて、回想に入ってゆく形式を取るが、これは失われたもののかけがえのなさを、これまた読者に痛切に思い知らせるのである。
2015/01/18
ちょこまーぶる
まさに学問ですよ。誰もが経験してきている淡くそして刺激的な思考と行動を気持ちよく表現されていて、一種の性教育のテキストのような感覚も持ちました。各章の頭に登場人物一人ひとりの人生のまとめがあり、それがより一層この本の内容に生と性と死という3つのテーマを真剣に考えるんだよって投げかけられているようにも思いましたね。それにしても、心太のような人に出会ってみたいものだ。
2013/05/16
びす男
「おれ、ただ、ちゃんと死んだ人が好きなだけだ」。中学生だった心太の一言だが、ちゃんと死ぬって何だろう。学校の勉強ができても、結婚して子供を生んでも、ちゃんと死ねるか分からない...。小説の大きなテーマである「性」を、顔を赤らめながら受け入れていく主人公たちを見ていて思う。この学問が大事なんだと。性と官能に正面から向き合い、それでいて性に溺れないための学問。月並みな言い方になるが、それは一つの愛のかたち学ぶことでもある。
2016/08/07
tenori
山田詠美さん初読。なぜか異質なイメージがあって読むのを避けていたのですが、無用な先入観を持つのは良くないもの。すごくまっすぐな純文学。思春期から大人へ至る過程での生と性と死に対する相反するような欲。誰もが通過するのに、言葉にするのを躊躇してしまうようなことを嫌みなく表現できるって素敵。各章が登場人物たちの訃報記事で始まり、幼少期に立ち帰る構成が斬新。生きるとは日々死へ向かうこと。そこで学ぶべきもの、問うべきもの、自分を形作るものは何なんだと考えさせられる一冊。村田沙耶香さんによる解説も衝撃。
2022/02/28
Shoji
男子二人と女子二人、仲良し四人組の幼少期から高校生に至るまでの成長物語。幼少期の性への萌芽、性に対して興味津々の中学時代、背伸びをしたがる高校時代、それぞれの年代における性に対する葛藤や機微がうまく描かれています。青春っていいなとつくづく思いました。私的には名作です。
2020/03/09
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