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季節のない街 (新潮文庫)

季節のない街 (新潮文庫)

季節のない街 (新潮文庫)

作家
山本周五郎
出版社
新潮社
発売日
1970-03-18
ISBN
9784101134130
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ジャンル

季節のない街 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ミカママ

戦後それほど時代の経っていないと思われる、とある町の長屋舞台の短編集。この長屋の住人たちがことさら貧しかったというわけでもなく、おそらく日本中がまだまだこんな感じだったんだろう。どれも読み終わってかすかな郷愁&既視感を感じる…日本人の根底を描いているからだろうな。映画『どですかでん』の原作を奇しくも読め、開高健の親しみにあふれた解説も良い。山周さんにはもう少し女性を勉強して欲しかったところだが、言っても詮ないことだ。

2021/01/16

みも

戦後…昭和20年代後半~30年代前半あたりかと思われるが、その流暢且つリズミカルな語りは、江戸庶民を映した古典落語を思わせる。隙間時間でも楽しめる1篇30頁程度の短編15篇で、貧民街に逞しく生きる庶民の行動や思いを赤裸々に綴る。ペーソスとユーモアと少しの酷薄さを底流に、過剰なドラマ性を帯びない人情噺が展開される。「街」と言うより長屋を中心とした界隈の、極めて狭小なエリアでのコミュニティでの妬み・嫉み・憤怒・悲嘆・羨望…それらを吐き出しながら日銭で暮らす人々ではあるが、僕ら現代人との相似性をも映し出す秀作。

2021/02/15

じいじ

久しぶりに読む山本周五郎の現代小説は、千葉浦安を舞台にした『青べか物語』の姉妹作。架空の「街」を舞台に生活するのは、その日その日を愚直に生きる人たち。山周さんが、厳しい眼差しで、温かくユーモアを交えて、15篇の連作で書き上げた力作です。ただ、今作の舞台である「街」の全体の風情は、陰気で昏い雰囲気です。書き手が大好きな山周なので、読み心地は同じでも、私的には明るい仕上がりの『青べか物語』の方が好きです。

2023/08/20

kawa

著者の現代物は初めて、長屋小説の代表作と言われるこちらへ。描かれるのは昭和30年前後の貧民街の人間模様、切なくもユーモアあふれる作にやられる。生まれた時期がピッタリ長屋生まれの私(記憶にないのだけれど…)、何か何かのシンパシーさもありなんの昭和を感じながら名作を読了。勢い余ってこちらが原作の黒澤明監督の「どですかでん」まで再見してしまった(伴淳や松村達雄が熱演、が、黒澤さんって女性を描くのが下手だと思う…)充実の天皇誕生日の振替日。

2020/02/24

KEI

ん10年ぶりの再読。その「街」に住む人々は日雇いで稼いだり、残飯を貰って生き延びていたり、ボロを集めそれに手をかけ日銭を稼ぎその日を暮らしていた。彼らには過去も無く未来も無い。あるのは今をどう生きるかの問題であった。そんな人々のエピソードを描いた短編集。見えない電車を乗り回す六ちゃんの「どてすかでん」の掛け声、父親の為に残飯を貰いに行き、父親のプールのある家の夢物語を楽しむ坊主、誰もが頼りにしている「たんば老人」など登場人物が魅力的であった。著者の細やかな筆致がより切なさを感じさせた。

2023/08/30

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