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変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

作家
フランツ・カフカ
Franz Kafka
高橋義孝
出版社
新潮社
発売日
1952-07-28
ISBN
9784102071014
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変身 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

高校生の時以来の再読。カフカの小説の全体像を知らないで言うのだが、『審判』や『城』と比べると、あの何処に向かうのか分からないような不条理さと昏迷の暗さはここにはないように思われる。むしろ、どこかある種の快活さにも似た明るささえ感じられるのだ。変身譚としては、『山月記』があるし、その典拠となった唐代伝奇の『人虎伝』もそうだ。ただ、カフカにあっては何の理由もない突然の虫への変身である。主題はむしろ、変身そのものよりも、さのことによる他者との意思疎通の不可能性にこそあるように思う。怖れられ(コメントに続く)

2014/10/24

ehirano1

彼是30何年ぶりの再読となりました。当時はとにかく圧倒されたことが記憶にありますが、齢を重ねた今、「グレゴール・ザムザは巨大な褐色の虫になってしまったにもかかわらず、なぜ会社に行こうとするのか?」がやけに記憶に残りました。ある意味、ザムザの社畜っぷりに思わず苦笑いでした。一方で、会社や仕事が人生への多大な影響の程度、そしてやがては訪れる定年退職後によるそれらの消失について考えさせられました。さて10年後に本書を再読すると一体どんな風に感じるか楽しみになって来ました。これだから古典は偉大です。

2023/02/18

黎明卿(禍腐渦狂紳士タッキー)

大好きな作品。グレーゴル・ザムザは朝目覚めたら虫になっているいきなりの展開で、原因など一切不明。気持ち悪いと忌避する方もいますが、人間が別の存在に変わる突飛さがなんと素晴らしいことか!ただ、淡々と冷静に語られていく文章と自己分析がまたいい。でも、私が1番やるせなさを感じたのは、虫になってしまったグレーゴルを恐れ、最終的には見捨てた家族。父親から受けた致命傷となる傷、徐々に衰弱していくグレーゴル。そして、妹が兄に対して放ったあのセリフ。家族のために頑張ってきたグレーゴルの静かな最期は何度読んでも泣ける。

2018/02/14

のっち♬

ある朝目覚めると巨大な虫になっていた男と家族の顛末。その謎は一切明かされることなく淡々と日常が綴られる。悲壮感よりも滑稽味を前に出した文体が著者らしい。彼の「変身」は他人と共有するにはあまりにも個人的過ぎる要素であり、周囲の「変身」ぶりは目を覆いたくなる人間の欺瞞への鋭い洞察が現れている。この関係は単なる個人間・家族間という次元に留まらず、絶えずせわしなく流動し続ける文明社会と、自身が変化していることに意識が及ばなくなった現代人に置き換えることが可能だ。実存的不安を抽出する力量は既に高い次元に達している。

2017/05/25

こーた

読みはじめは大笑いしていたのに、さいごは泣きながら本を閉じる。電車のなかで、自分の部屋で、読んでいる間じゅう、足元から巨大な虫が這ってくるような感覚に覆われ、全身がゾワゾワする。部屋に閉じこもった(こめられた)グレーゴルは、いつかのわたしであり、かれを見守る家族たちもまた、わたし自身なのである。過労、介護、ひきこもり。家族、責任感、未来、夢と希望、そして、諦め。あらゆる感情とあらゆるわたしに、共感しつつも、徹底的に共感できない。だって虫なんだもん。これぞシュルレアリスム。快と不快が同時に襲ってくる!

2018/07/10

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