彼女の思い出/逆さまの森 (新潮モダン・クラシックス)
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彼女の思い出/逆さまの森 (新潮モダン・クラシックス) / 感想・レビュー
ケイ
訳者金原さんに感謝。短編9つと中編1つ。『彼女の思い出』:完璧な恋のお話。隅々まで愛おしく、気づけば涙を流しながら本を抱いていた…と形容出来そうな読書体験。『おれの軍曹』:バークのために泣いてくれるような女を選ぶんだな まったくだ。こんな短編ふたつを読み、サリンジャーがD-dayに参加してのだと知れば、隠遁している彼に連絡を取ろうとする者は不粋だろうと思うほかない。中編『逆さの森』腕を力任せに振り切ってこの女を殴ってやりたい。彼女のために。しかし、恋も愛も所詮はこんなもんなのだろう。
2023/03/31
藤月はな(灯れ松明の火)
短いが読みながら心をかき乱された「すぐに覚えます」。何故なら、くだらない周囲からの評価で芽生えた自尊心の粉砕と羞恥・怒り、軽蔑、自分よりできない相手を下に見る事での安心感、後ろめたさ、「今、罰を受けている」という苦さなどが芋蔓式で呼び覚まされるからだ。「ブルー・メロディ」は懐かしくも輝かしい子供時代を綴っていたのに黒人差別にアメリカ社会の冷たさを実感させられ、心を凍った。「ふたりの問題」は何時までも若者時代が抜けない夫と「母親」としての自覚を持った妻との噛み合わなさにヤキモキする。この場合、私は妻側に立つ
2023/04/08
優希
みずみずしく爽やかな味わいの短編集でした。サリンジャーはまだ未発表の作品があるようで、それらを読めることを楽しみにしています。
2022/08/29
ポルコ
ナイン・ストーリーズほど難解ではなく、とても初々しく瑞々しい短編集。だがサリンジャーらしく一筋縄ではいかない、入れ子式構成が面白い。まだ没後未発表作品が出版されるかも、ということなので楽しみ。
2022/08/13
Y2K☮
サリンジャーのB面集。カップリングの名曲を揃えたオアシス「マスタープラン」には及ばない。いくつかの作品は創作科の学生がドヤ顔で綴った風のオチで後年の誇り高い姿勢からは懸け離れている(だから生前に書籍化しなかったのだろう)。作家として認められることで頭がいっぱいだった時期に書かれたのかも。だが全否定もできない。特に「彼女の思い出」「おれの軍曹」「ブルー・メロディ」は著者ならではのイノセンス及び無常な現実との苦闘に抉られた。「逆さまの森」は別れたあの人へのメッセージだろうか。詩人は作家とはまた少し違うと思う。
2022/08/08
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