新装版-朱唇-中華妓女短篇集 (中公文庫 い 92-33)
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新装版-朱唇-中華妓女短篇集 (中公文庫 い 92-33) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
色と芸、艶に通じつつも心と身体を心に許すのは自分が認めた最愛の人だけ。そんな健気さと気高さを兼ね備える女性とは、即ち、妓女である。「朱唇」の王月はまさにそれを体現する人だった。言葉少なだったが情が深い王月が言葉にしなかった想いを馳せる語り手の老人に生き延びた者の哀愁と友への敬意に目を伏せる。しかし、聴き手の男の野暮さに脱力。同時に「此奴、モテないだろうな」と確信しました(笑)「背信」の裏切りの訳に同性として共感してしまった。想いを叶えられぬなら、せめて共に堕ちて欲しいと願っても叶えてくれない恨みの深さ。
2024/01/22
フキノトウ
花街で働く人たちのお話。楽士として働き男の愛人を持ち、皮肉屋で美貌の張魁のお話「断腸」が面白かった。
2023/12/27
たけはる
この作者の本、しかも中国妓女がテーマなら買うしかないでしょう、と即買い。読んでみて、やはり買ってよかった。どの話にも共通する妓女の悲哀、誇り高さ、したたかさ。それらをたっぷりと味わえました。表題作『朱唇』『名手』が特に好き。『名手』の元ネタである琵琶行はもともと好きな詩でもあり、主人公が白居易であることにもテンションが上がりました。
2024/01/13
Bks
中国の唐~清代の妓女をテーマにした短編集。男に囲われるだけでなく自身の機転や才覚で日々立ち回る妓女たちが描かれる。気が強く人情にあふれる妓女が、ある貴人の手を借りて、傷つけられた仲間の妓女の名誉のために小さな復讐をする「牙娘」が良かった。中国史に登場する人物がサプライズ的に出てくる。板橋雑記、北里志など実在の古典を題材にしているようで、解説ではそれぞれの出展元も紹介されている。 昨今の中華もの流行の影響か、この作家さんの著書が続々復刊されているようなので読んでみたい。
2023/11/21
Ryo0809
中国の妓楼を巡る短編集。唐から明末までの時代、それそれの時代を彩った花街や芸の話が実に小気味よい。どの話も切ないながら、それでも懸命に生きた人間の心意気が伝わってくる。実在した登場人物を題材に、作者井上裕美子の創作が冴え、短編とは思わせない味深さがある。色や芸、艶というのは、やがては朽ちて変わりゆくのだろうし、裕福で粋を解するものだけに許される贅沢だろう。その世界を創り出し、遊ぶことができるのも人間というものなのだ。本を通してそんな世界を垣間見るのも、読書の楽しみだろう。
2023/12/03
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