『パンセ』で極める人間学 (NHK出版新書 677)
『パンセ』で極める人間学 (NHK出版新書 677) / 感想・レビュー
パトラッシュ
人の心の動きについて『パンセ』は様々な指針を与えてくれるが、読むだけでは理解できない部分も多い。まして書かれた時代とは全てが異なる日本人にはどんな意味を持つのか、鹿島さんは現代の状況に引きつけて解説していく。トランプが熱狂的に支持されるのか、統一教会に身も心も捧げて悔いない人が出てくるのか、自分の部屋に引きこもって外の世界を拒絶するのか。日々報道されながら理由がわからない「なぜ」について、幸福と自己愛を追求する人のあり方を分析したパスカルの言葉から見えてくる。力ある正義が正しいとは、説得力でも同じなのだ。
2022/09/04
ろべると
パスカルの「パンセ」の名前は知っていたが、有名な「人間は考える葦である」の出典がこれで、「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら」もここから来ており、さらにパスカルの原理や圧力の国際単位であるパスカル(Pa)の人だとは知らなかった。ダヴィンチのような人だ。三十代で世を去ったため未完ではあるが、深い省察による言葉の重みが感じられる。人間は完全な休息には耐えられず、仕事を含む「気晴らし」なしでは生きられないとする一方で、楽しい気晴らしに追われて自己を考えないと、気がついた時には死が迫っていると言う。心せねば。
2022/08/05
リットン
難しい言葉ではないけど、なんか何言ってるかわからなくてパラパラ読もうとすると、何の話だったかわからなくなる。パスカルの人間観が少しわかって、そういう見方もあるのだなぁと感じる。パスカルの残した断片を、紡ぎ直しながらパスカルの思想に迫ろうとする学問なのであって、「パスカルの思想」として確固たるものがあるわけでもなく、解釈の余地があるというのは面白いなと思った
2022/08/17
ソーシャ
著者が選んだパスカル『パンセ』の断章を並べ、解説付きで紹介していく新書。ページあたりの字数は少なめで、(気晴らしで)忙しい人でも読みやすいようにしつつも、パスカルと『パンセ』の魅力が十二分に伝わってくる本となっています。読んでいて、ちょっと人生を見つめ直したくなりました。
2022/06/16
ほととぎす@nekohototogisu
小である事は大である、の様な矛盾した事を言ってるんだけど、これが中々説得力があり深みもある。人間が矛盾した存在であり、人間が作る社会もそうだからだろうか。もちろんパスカルの巧みなレトリックと皮肉、鋭い人間観察・社会観察の賜物でもあろう。それ以上に護教学というのか、神の存在証明を本気でしようとしたパスカルの本気さや熱量、人間性が感じられるのが面白さの理由だと思う。
2022/06/30
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