KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

プロトコル・オブ・ヒューマニティ

作家
長谷敏司
出版社
早川書房
発売日
2022-10-18
ISBN
9784152101785
amazonで購入する Kindle版を購入する

プロトコル・オブ・ヒューマニティ / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

みっちゃん

事故で失った片足にAI義足を装着したダンサーの再起の物語。舞踏という芸術的な分野と最先端の技術が馴染み、融合する事は可能なのか。技術者達との試行錯誤を経て、次第に主人公の心と身体、そして人工知能の義肢がお互いを学習して一つのものを作り上げていく経緯は読み応えあり。そして並行して描かれる父の介護。嘗ては目標であった父が自分を失い、彼の生活を阻み。でも二人を繋ぐダンスがその介護を支える。こちらは技術だけでは賄えない。卑近な金銭の問題も描かれる。やはり様々な発展は人の心と共にある、との思いが強くなる。

2023/01/10

パトラッシュ

既にパラリンピックでは義足のアスリートが健常者をしのぐ記録を出しているが、そこにAI機能を追加してダンスも可能となる近未来はどんなものなのか。学習機能を備えて隻脚のダンサーの負担を軽減し習熟を高めるシステムは、ガンダムの教育型コンピューターと同じ理論で読者を納得させる。AIがヒトと融合しロボットを従えてアートを達成する瞬間は、シンギュラリティと人間の一体化を描く初のSF。しかも単純な科学の勝利ではなく、認知症の父が脳にしみついたダンスを本能的に踊る姿を通じて、肉体の記憶がAIに匹敵する強さを証明している。

2023/01/17

ちょろこ

熱、の一冊。人は何かを表現する時こんなにも熱を発するものなのか。時は近未来2050年。事故で片脚を失くした主人公がダンサーとしての再起をかけてAI制御の義足と共に人間性の表現を模索していく物語は明るさは皆無、容赦ない地獄の連続。認知症の父との関係は決して絵空事ではなく現実問題として心を殴打すると同時に、ダンス、対極にある父と息子、数々の融合がそれこそ言葉による"速度"と"距離"の熱で圧倒してきた。今、この想いを伝えたいという熱、それはAIと共存はできてもその部分は譲れない、人間だけが持ち得る権利だと思う。

2023/02/06

keroppi

今年の星雲賞を受賞したというのを知り、読んでみた。現在の延長上にある近未来SF。全自動運転やAIが日常的になっている。事故で片足を失ったダンサーがAI制御による義足で、ロボットとのダンスに取り組む。並行して、ダンサーである父の認知症による介護が描かれていく。その描写はリアルで、人間とAIの共存と、人間の芸術性と尊厳と汚さも描かれる。近未来SFであるが、今、起きていることのようにも思える。

2023/08/18

がらくたどん

もう40年以上前のパソコンの外部記憶装置がテープレコーダーだった時代の話だが日常の小さな動作の行程を出来る限りプロトコル分析し機械アームで再現する企画に付き合った事がある。人はボールを掴む動作だけでも膨大な手続きを微修正しながらこなす。脳の手続き記憶はあるのに実働器官の足を失った若いダンサーと、四肢はあるのに認知症により脳の手続き記憶が不安定になった老ダンサー。近未来を舞台に、身体に刻まれたプロトコルの存在・人と人の間で非言語的に伝達されるプロトコルの可能性を視野に入れ「人間性」と脳との関係を探る意欲作。

2023/03/23

感想・レビューをもっと見る