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アンダーワールドUSA 下

アンダーワールドUSA 下

アンダーワールドUSA 下

作家
ジェイムズ・エルロイ
田村義進
出版社
文藝春秋
発売日
2011-07-22
ISBN
9784163742908
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アンダーワールドUSA 下 / 感想・レビュー

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W-G

足掛け10年以上かけてアンダーワールドUSA3部作読了。夏草や~の芭蕉の俳句を思わせる悪党たちの夢の跡。下巻341頁以降は、あくまで3部作全体のエピローグのような位置付けと、私は解釈した。これを単体ミステリ作品の解決編と捉えてしまうと、俄然風味が落ち非常に勿体無い。ケンパー、ピート、ウォード、ウェイン、ドワイト、屈折した悪党たちの上を時代が通り過ぎていき、その果てで今もクラッチが時を刻む。らしくないほど綺麗な一大絵巻。エルロイの濃密さや緻密さにあてられてしまうと、他作家の作品にすぐに頭を切り替えられない。

2016/08/12

ずっきん

JFKに始まり、ベトナム、公民権運動まで、時代の過渡期に揺れ動き、苦悩する人物の造形が見事すぎる。彼らの贖いきれない罪と贖罪。行く末は凄まじい。わたしはその度に本を閉じる。呪詛を吐く。だが、読むのを止められない。文章の洗練度もこの完結編で極まり、ケンパー、ウォード、ピート、ウェイン、ドワイト、史実の汚泥を掻き分ける悪党たちの生き様がクラッチに流れ込む。収束していく。ああ、美しい。そして『今』なんと切なくも救われるエピローグだろう。エルロイ、こいつは容赦無しの狂犬である。そしてロマンチストに違いない。

2021/03/02

藤月はな(灯れ松明の火)

溜めていた分だけ、暴力は爆発的に広がる。悪党共は自滅、または消し去りたい「時代」によって粛清され、消えていく。後に残るのは暴力(男)を土台にした、いつもどおりの日常(女)。それを象徴するのが非暴力を掲げてきたカレンが自らの正義の理論で人を殺した場面だろう。この場面は、ペキンパー監督の『わらの犬』での偽善の薄ら寒さを感じさせたのが印象的でした。虚しさが漂う終幕に対し、希望は語り手であり、この物語では影響力が少なかったクラッチ青年の成長とあの時を振り返る口調の穏やかさだろう。

2016/01/18

Richard Thornburg

感想:★★  上巻で感じた緩慢な展開の印象は変わらず、むしろ緊張感はなくなってしまった感じ。  シリーズ1~2で拡げた風呂敷を畳むのに夢中になりすぎてる感じで、括りも弱いかな。  シリーズ1~2があまりに政治的謀略のウエイトが大きかったので期待しすぎたせいかもしれませんけど、本作はかなり肩透かしを喰らった感じです。  起きる事件もローカルニュース的で登場人物も次々に死んでいくのだが、それまでの行動パターンから考えるとあまりにもお粗末な気がします。

2021/08/21

バ度ホワイト

前作「アメリカン・デス・トリップ」の読後ズシンと疲労を感じる重たすぎな物語と比べると何かパンチに欠けるような気もしないではないが、登場人物の多さ、複雑な物語の交錯具合は相変わらず引き込まれる。心に傷を持ちながらも常に前を向く二人の女性ジョーンとカレンの存在、めちゃくちゃ若いのに狡猾で、しかし若さゆえ突っ走る青二才クラッチの成長物語としても読めてしまうところが、前作の重たい政治小説とは違う魅力を放っていた。でもラストを飾るにしては、お話がこぢんまりとした感じかな。

2021/10/10

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