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N/A

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作家
年森瑛
出版社
文藝春秋
発売日
2022-06-22
ISBN
9784163915623
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「N/A」のおすすめレビュー

【文學界新人賞受賞作『N/A』】選考会で異例の満場一致! 優しさと気遣いの定型句に抗う、圧巻のデビュー作! 芥川賞候補にも!

『N/A』(年森瑛/文藝春秋)

 人間は、往々にしてカテゴライズすることによって他者を、世界を理解する。そのカテゴリーには、時としてルールとマナーが伴い、「正しい」振る舞いが規定される。カテゴリがなければ我々は途方に暮れてしまうだろう。ある言葉を知ることで、自分自身をよりよく理解することだってある。しかしながら、分類のための言葉がが取りこぼす何かを感じて、モヤモヤとした気分にさせられたことがある人もまた、決して少なくはないだろう。

 年森瑛氏による『N/A』(文藝春秋)は、まさに他者からのカテゴライズの言葉に違和感を覚えている高校生の物語。選考委員の異例の満場一致で第127回文學界新人賞を受賞したという今注目の作品だ。タイトルになっている「N/A」とは、 “not applicable” あるいは”not available”の略語で「該当なし」あるいは「入手不能」のような意味を持つ。

藁半紙が光って見えたのは十三年の人生で初めてだった。

 物語はそんな印象的な一文で始まる。13歳の松井まどかは、保健室だよりに書かれた「低体重は月経が止まる危険性があり…

2022/6/24

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N/A / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

これが年森瑛のデビュー作で、第127回文学界新人賞を受賞している。第167回芥川賞候補となったが、こちらは選に漏れた。私は受賞した高瀬隼子の『おいしいごはんが食べられますように』よりも、こちらの『N/A』の方にむしろ斬新さと可能性を感じる。女子高生のリアルな日常が新しい文体で語られているからである。しかも、それは身体と精神とが不即不離の密接さで提示される。主人公のまどかはSNSに現れる自己が(他者もそうなのだが)一面にしか過ぎないことを知っている。そして、そうした一面から自身のイメージが固定されることに⇒

2023/10/13

starbro

第167回芥川龍之介賞受賞作・候補作、第一弾(1/5)、漸く読み始められました。今のJKのリアル、少し「推し、燃ゆ」に似た雰囲気でした。 『N/A』というタイトルだから、もやっとしたエンディングなのでしょうか❓ 結果は、わかっていなくても、個人的に本書を芥川賞には推しません(笑) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915623

2022/08/01

ろくせい@やまもとかねよし

平均的ではない女子高校生が自己形成していく物語。自己形成に欠かせない利己。反する利他も必要だが、それは周囲と調和が不可欠。現代社会は人類の多様を可視化。多様は尊いと謳う学校。一方子どもたちに平等の名の下、平均の身体的生育を基準に。そして平均の精神的生育も基準だと用いる。思い遣りは、他人、友だち、恋人、血縁関係者で分けるべきだと。恋愛は異性間の身体・精神相互作用だと。彼女は欲す。混乱する利己を傷付けない他者からの利他、それに応じる自身の利他を。そして知り得たに違いない。分類できない利他から生じる思い遣りを。

2022/07/02

いっち

主人公は、「かけがえのない他人」に憧れている。小学生のときに付き合った男子は、主人公が他の男子と話すと嫉妬を見せたので、別れた。主人公にとって「かけがえのない他人」は、友達、恋人、家族というヒエラルキーにはない。特別枠だから、独占も嫉妬も必要ない、何者にも代えがたい存在。女子高生になり、教育実習の女子大生と付き合うが、女子大生がSNSで主人公との日々を発信していた。女子大生はマイノリティの立場からの発信で同じ境遇の人を励ましていた。主人公は許せない。どちらの言い分もわかる論争なので、安易に結論が出せない。

2022/06/18

R

タイトルと表紙の印象で理系学生の悲喜こもごもかと思ったら全く違った。LGBT的な話でもあるのだが、その軸ではなくいわゆる子供から大人への揺らぎを描いた小説だったと思う。自分が何か確定していない、その不安定さが繊細な思春期よりもやや後のそれこれとして丁寧に描かれていてよかった。リアルなのかわからんが、最近の子っぽい会話文の軽妙さも面白くて、だからこそ友人たちとの微妙な意識差というか、気遣いや機微が幼く、手に取るように見えるのがよかった。いい青春小説だったと思う。

2022/10/13

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