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噓つきジェンガ

噓つきジェンガ

噓つきジェンガ

作家
辻村深月
出版社
文藝春秋
発売日
2022-08-25
ISBN
9784163915845
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「噓つきジェンガ」のおすすめレビュー

辻村深月氏、最新作『嘘つきジェンガ』で3つの“詐欺”を描く。一線を越えたら戻れない、嘘にすがりついてしまう人間の哀しみ

『嘘つきジェンガ』(辻村深月/文藝春秋)

 自己肯定感は高すぎても低すぎてもしんどいけれど、たいていの人は、多かれ少なかれそのどちらかに寄っている。自分なんかどうせ、と卑屈になったり、どうして自分がこんな目に、と憤ったり、その繰り返しで生きている。その隙間に滑り込んで、甘い言葉で囁きかけてくるのが詐欺師だ。辻村深月さんの最新作『嘘つきジェンガ』(文藝春秋)は、ほんのちょっとの揺らぎを突かれてしまった人たちを描いた三編を収録している。

 第一話「2020年のロマンス詐欺」の主人公・耀太は、緊急事態宣言が発令された2020年の4月に大学1年生となり、友達をつくることもできず、東京でひとりぼっち。飲食店を営む両親からの仕送りも減り、生活費を稼ぐためにバイトしなくてはならないのに、雇ってくれるところもない。そんな彼に手を差し伸べたのが、地元の幼なじみ。与えられたリストの人物にメールを送るだけでお金がもらえるというバイトの紹介だった。

 メールをするだけだから犯罪じゃないという言葉に乗せられ、バイトを始める耀太は、やがて取り返しのつかない場所まで足を踏み入れてし…

2022/8/25

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噓つきジェンガ / 感想・レビュー

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さてさて

“騙す側”と”騙される側”。この作品ではそれぞれの”側”に回った人たちの心の内が感情の機微の描写の中に描かれていました。『一線を越えてしまったら、もう戻れない』と”騙す側”に堕ちる危険を教えてくれるこの作品。『今の私だったら、絶対に騙されない』と”騙される側”に回った過去を見るこの作品。”騙し、騙される”感覚を『ジェンガ』というバランスゲームの危うさに比喩するこの作品。“騙し、騙される”という犯罪行為が描かれているにも関わらず、極めて読後感の良い結末に、辻村さんの語りの上手さを感じた素晴らしい作品でした。

2022/08/27

パトラッシュ

人は誰も現状が不満でたまらず、もっと金持ちになるか才能を認められるか名誉を得るなどして周囲に高く評価されたいと願う。第1作で耀太を詐欺に誘う幼馴染が「みんな、こっちがびっくりするくらい、自分に夢見てっから」と喝破する通りだ。そんな現状変革の手段として詐欺に手を染めたり、逆に引っかかってしまう悲喜劇は愚かにも哀しい人の性か。無論、辻村さんは詐欺絡みの人間模様だけでは終わらせず、騙し騙されの果てに新たな道を見い出す姿を持ってくる。何だか「犯罪は割に合う」とすら思えてしまう苦いユーモアが、鮮やかな読後感を結ぶ。

2022/09/21

starbro

辻村 深月は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の最新作は、詐欺に纏わる連作短編集、オススメは『あの人のサロン詐欺』です。危ういジェンガの雰囲気が醸し出されています。 https://books.bunshun.jp/articles/-/7386?ud_book https://anchor.fm/hon-web/episodes/ep-e1mhb04/a-a8crr7l

2022/09/19

bunmei

他者や世間からの視線の中で、自分だけが取り残されていくような孤立感や哀しみを募らせていく人々。そんな人達が、コロナ禍では特に多くなり、少し見栄を張ったり、幸せを望んだりしたばかりに、ついてしまった嘘。その嘘がバレないように、次々と嘘で塗り重ねていく現状は、ほんの一瞬の気の緩みで、ジェンガのごとく一気に崩れ落ちていく。本作では、本来は決して悪ではない主人公達が、いつしか騙し、騙されて、身動きが取れなくなり、底なし沼に足を取られていく悲哀が描かれている。決して共感はできないが、その衝動は、察することはできる。

2022/09/06

まちゃ

コロナ禍、子供の受験、叶えられない夢。追い詰められ、何かに縋った人々が巻き込まれた詐欺をめぐる3つの物語。どの物語も希望のある結末で読後感は良かったです。人生とは微妙なバランスを保つことで維持されていると感じる優しい作品でした。

2022/10/08

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