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透明になれなかった僕たちのために

透明になれなかった僕たちのために

透明になれなかった僕たちのために

作家
佐野徹夜
出版社
河出書房新社
発売日
2023-11-08
ISBN
9784309031293
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「透明になれなかった僕たちのために」のおすすめレビュー

特殊な遺伝子を埋め込まれた子どもたち。20冊以上の参考文献によって生々しく描かれる「遺伝×犯罪サスペンス」

『透明になれなかった僕たちのために』(佐野徹夜/河出書房新社)

 佐野徹夜『透明になれなかった僕たちのために』(河出書房新社)は、2019年1月発行の『文藝』に掲載された同名短編小説が核となっている。著者は4年をかけてそれを推敲したそうで、待った甲斐のある渾身の一作となった。短編の時と同様に、健気に生きようとするヒロインと、彼女を助けようと奮闘する主人公の関係に、落涙する読者も多いはずだ。

 不穏な空気が支配するサスペンス・タッチの同作だが、何よりユニークなのはその設定だろう。不妊治療によって産まれた双子のアリオとユリオは、周りから気味悪がられるほどそっくりだ。その兄弟には幼い頃から原因不明の自殺願望があり、ユリオは実際に14歳で自死を遂げた。アリオもまた、こんな酷い世界には生まれてきたくなかったと言う。そこにふたりと幼馴染の深雪も合流。3人は世をはかなんでいるという意味では、皆共通する心性の持ち主であり、ゆえに、深刻な事態に足を踏み入れる。

 また、アリオは大学で蒼という美少女に出会う。そして彼女の紹介で市堰という学生と相対するのだが、あまりにも自分…

2023/11/9

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透明になれなかった僕たちのために / 感想・レビュー

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starbro

図書館の新刊コーナーで見つけて読みました。佐野 徹夜、初読です。年末年始に読む本を確保するために借りたので、あまり期待していませんでしたが、読書メーター『読みたい本ランキング』1位獲得だけあって、傑作とまでは言いませんが、予想外に面白くスマッシュヒットでした。若い頃の島田雅彦に似ている雰囲気もある青春DNAミステリです。佐野 徹夜の他の作品も機会を見つけて読んでみたいと思います。 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309031293/

2024/01/06

absinthe

連続殺人の犯人と自分に血縁があるのでは?という重い内容なのだが。主人公を含めて周辺人物が生きているのも嫌だという程に厭世的で、何事にも真剣になれない性格なので、どうも深刻さが伝わってこない。人間に自由意志は存在するのか、無意識と意識の関係は、遺伝子と意識の関係は?とabsinthe好みのテーマが埋められているのだが、踏み込みが浅い気がする。

2023/10/28

ヒロ

作中はDNAなどの難しい事柄の説明とか沢山ありましたが、それ以上に生と死について等の様々な哲学的な描写もあって物語がとても深く感じられました。心理描写も色々な表現でされていて、読む方に様々な感情を呼び起こさせてくれましたし、サスペンスなのでハラハラドキドキ感も味わえました。この一冊でかなり満足感を得られたと思います。哲学的な問いかけがいくつかありましたが、ホントに深いな〜と思わせられながら読んでました。

2023/11/27

えみ

信じていいよね、命っていうのはこんなものじゃない。と。命の備蓄。誰も彼も誰かの許しを得ながらこの世に存在しているわけではない。死生概念が追い詰める命の選択。死への逃避行。要求する誰かの生。これは…果てしなく透明を追求した彼らの破滅のための代理自殺だ。生まれたことは間違いで、死ぬことで救われる。狂気を隠さず、強固に、粘着質に…遺伝子レベルで消失の衝動を突き動かす。不可解な殺人事件と自殺願望。誰かの悪意のない殺意の気配がする。それを恐怖と感じない死にたいアリオが不気味である。不気味なのに存在感が希薄。君は誰?

2024/02/12

よっち

双子の弟ユリオがいなくなってからどこか気持ちが中途半端なまま、幼馴染の深雪とともに大学生になったアリオ。連続する殺人事件を契機に驚愕の真相が明らかになってゆく青春サスペンス。食費を浮かすために大学の新歓をはしごしている中で出会った蒼や、その紹介で出会ったアリオにうり二つの市堰との関係が生まれてゆく一方で、ジョーカーと名乗る人物から送られてくる不審なメール。そして周辺で起きる殺人事件。生きる希望を見いだせない彼らが直面する思ってもみなかった真相でしたが、やるせない結末の中に彼が希望を見いだせて良かったです。

2023/12/12

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