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キャロル (河出文庫 ハ 2-12)

キャロル (河出文庫 ハ 2-12)

キャロル (河出文庫 ハ 2-12)

作家
パトリシア・ハイスミス
Patricia Highsmith
柿沼瑛子
出版社
河出書房新社
発売日
2015-12-08
ISBN
9784309464169
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キャロル (河出文庫 ハ 2-12) / 感想・レビュー

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紅はこべ

主にテレーズの視点から描かれているが、これがキャロル視点になると、同性愛者版『アンナ・カレーニナ』って感じになるのかな。恋と同時に子供への愛も捨てられない女性ということで。テレーズの恋に落ちる様は細かく描かれている。心理小説みたい。王道な恋愛小説だと思った。『制服の処女』はあくまで精神的な愛情だが、本作は肉体的愛も描かれていて、大人の愛。辛い結末を予想していたが、ハイスミスにしては、意外な終わり方。読後感は良い。リチャードとハージはゲスだった。女に想定外の行動を取られた男ってそんなものか。

2017/05/31

utinopoti27

舞台は50年代のアメリカ。本作は19歳の駆け出し舞台美術家テレーズと、美貌の人妻キャロルが織りなすレズビアン小説だ。自分にない成熟した女性の魅力を持つキャロルに対する憧れが、いつしか揺るぎない愛に変わってゆく・・。出口の見えない破滅の予感が支配するハイスミスの作品群の中で、異例の純愛物語は、甘美で切ない調べを奏で続けます。ちなみに、同性愛の嗜好を持つ作者の自伝的要素も含まれているのだとか。LGBTが異端視された当時の世情にあって、性別の垣根を超えた普遍的な愛をあえてテーマにした本作の意義は大きい。

2019/06/06

やきいも

2015年に映画化された作品。毎日新聞の書評欄でもとりあげられました。19歳のテレーズと人妻のキャロル。1950年代のニューヨークの女性同士の恋愛を描いた本。どんな事があっても前向きに道を切り開く主人公たち。やはり女たちは強い。登場人物の心理が細かく描かれていて読んでる自分が恋愛の渦中にいるような気分になった。また再読したい。

2017/01/20

びす男

映画見たなと、ラストシーンで思い出す。抱き合った瞬間の、天国もかすむほどの喜び。愛し合うほどに、失うもの――。女性同士の恋愛だが、そこに見えるのは普遍的な人間の姿である■「ロミオとジュリエット」で両家の確執が二人を隔てたのと同様、キャロルとテレーズの間には「世間」が立ちはだかる。何かを越え、手放さなければいけないという葛藤は男女間のそれと変わらない■女性同士の恋を初めて真面目に扱った作品だと、解説は言う。男の読者も切なくなり、そして祝福したくなるのは、テーマの独自性に依存していない小説だったからだろう。

2019/10/10

えりか

あぁ、麗しのキャロル。その気高い猫のような気まぐれも愛というフィルターを通せば、全てが愛しく感じられる。輝くブロンド、光や炎を秘めたグレーの瞳、タバコを挟む指、運転中の横顔、全てが美しい。愛の喜びや不安、絶望や希望という心の動きが痛いほど繊細に描かれている。また少々冷酷とも思えるようなテレーズの性や老いに対する批判的な態度も、未熟さゆえと言えるかもしれない、ラストは彼女なりの経験を経て、成長を遂げているように思える。二部のスピードにのった、喜びからの絶望への落差に胸が締め付ける。切なくて美しい物語だった。

2017/12/28

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