ミトンとふびん (幻冬舎文庫)
ミトンとふびん (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
さてさて
『失うものがないということがなぜか安心につながっていた。もう死は私に追いついてこない』。長短織り交ぜた6つの短編が収録されたこの作品。そこには、それぞれの短編で主人公となる6人の女性たちの物語が描かれていました。台北、ヘルシンキ、そして八丈島とバラテエィに富んだ旅先にどこかは興味ある場所が見つかるであろうこの作品。そんな旅先に旅情を掻き立てられるこの作品。“たいせつなひとの死、癒えることのない喪失を抱えて生きていくー”という内容紹介の世界観が描かれていく物語の中に予想以上の深みを感じた、そんな作品でした。
2024/02/20
ふう
家族や友人を失なった女性の『いつもと違う街角で、悲しみが小さな幸せに変わるまで』を描いた6話の短編集。大切な人を失った悲しみは静かに、とても静かに、落ち葉のように水底に沈んでいきます。その悲しみは忘れることも消えることもないけど、深く沈めたまま、残された人々は残された大切な時間を生きていくしかないと、旅先で出会った人々が教えてくれました。わたしもそんな人々に出会う旅をしたいと心から思いました。とくに冬のヘルシンキ。自分も年老いているのに、あの老夫婦に会ってムーミンチョコをもらえたらと思ってしまいました。
2024/03/20
小太郎
久しぶりの吉本ばななさん。この本はジャケ買い、読んでみると普通の文庫サイズより若干小さいし活字の組み方が違います。これなら老眼鏡が無くても読めるかもしれません(笑)調べてみるとか出版社によって少しずつ違うみたいです。ハヤカワが縦に長いのは知ってたけれど。この幻冬舎文庫は幅が短い。6編の短編集、どれもがテーマは喪失だと思います。母や親友を失ってからの主人公の感情が淡々と語られていて独特の世界を醸し出しています。旅や異国、ちょっとしたセンチメンタリズムやスノッブ感はちょっとクセになるような気がします。★4
2024/04/01
エドワード
吉本ばななさんも還暦ですね。でも一貫して若者の愛や悩みを描く姿勢が変わらない。それも、LGBTやバツイチ等、少数派の人々。愛する人を失った人。標題作は、病気で子宮を取ったゆき世と外山君は、両方の母親から結婚に反対される。それでも彼らはヘルシンキへ旅立つ。零下の地で忘れてきたミトンを買う。ふびんは?「この上ないふびんさを自明のこととして持つ人類と、その輝かしい幸せを乗せて、地球は回っているんだな。」これは彼女の小説全体に通じる。悲しみとユーモア。台北やローマや八丈島の人々も優しい。何とか人は生きていけるさ。
2024/03/17
ichi
☆5
2024/02/28
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