菊水兵談 ―横溝正史時代小説コレクション1- (春陽文庫 よ 12-1)
菊水兵談 ―横溝正史時代小説コレクション1- (春陽文庫 よ 12-1) / 感想・レビュー
HANA
巨匠の書いた時代小説という事で、人形佐七みたいな魅力的な謎やバリバリの伝奇を想像したのだが、意外と内容は平坦。初期の吉川英治みたいな読み心地がするなあ。時は幕末、倒幕に身を投じた主人公菊水兵馬の活躍を描くのだが、全体的に主人公に癖がなく影が薄い。途中までは好敵手や悪女入り乱れての十万両争奪戦なのだが、両者とも巻半ばで退場してしまい、後半は主人公が幕末如何に過ごしたかみたいになってしまっている。それでも江戸から京へ十万両を如何に運んだか、での旅役者のトリックは著者のミステリ作家としての力量が垣間見れました。
2023/10/09
はかせ
大先生が歴史小説?まあおあそびの習作のよう。吉川先生が人気作家だってのにあやかろうってことか。金田一にたどり着くまでまだかなり時間があったのか。
2023/09/27
卍ザワ
松本清張や山田風太郎の時代小説を復刊で、気になっていた春陽文庫。本書のオリジナルは、太平洋戦争を開戦した昭和16年に発表された。中盤までは、ミステリーのトリックを、ストーリーを盛り上げるため、うまい具合に利用した、探偵小説作家ならではの時代小説だが、通俗性が濃く、歴史の重厚さみたいなのは薄い。肝心の主人公の菊水兵馬だが、当時の世相を反映してか、地味で魅力に乏しい。金田一や由利のジュブナイルよりはマシ、と思う。時代小説コレクション1と、なっているが、第二弾があるのか。「髑髏検校」クラスを期待。
2023/09/09
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