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森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)

森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)

森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)

作家
森鴎外
出版社
筑摩書房
発売日
1996-02-22
ISBN
9784480030917
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森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫) / 感想・レビュー

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夜間飛行

《日はあそこを駆けて行って、また新しい生活を促すのだ。/己のこの体に羽が生えて、あの跡を/どこまでも追って行かれたら好かろう。/そうしたら永遠なる夕映の中に、/静かな世界が脚下に横わり、/高い所は皆紅に燃え、谷は皆静まり返って、/白銀の小川が黄金の江に流れ入るのが見えよう。》…父の錬金術に対する悔恨と、限りない飛翔願望。そのとき力を貸す悪魔は、人の生にくり返し現れる淫行、裏切り、耽溺? 異国の作品に自らの感情を見出し、自国にはまだそれがないことを知った鷗外は、どのような思いでこれを訳したのだろう。

2019/08/15

syaori

ファウストとメフィストフェレス、この有名な二人の遍歴は何と心を踊るものだったことでしょう。可憐な少女との恋があるかと思えば美女へレナを求めて異教の神々の間を彷徨い、大帝国の騒擾を平定する。魔女の哄笑やホムンクルスの放つ光、セイレエンたちの歌声に彩られた旅は、まるで暗闇に次々と打ちあがる美しい花火を見ているような華やかさ。結局壮大なこの本を理解できたのかは疑問なのですが、神や悪魔、人間が錯綜するこの物語が私の心を擒にしたのは、ファウストとともに生きた作者の「肺腑から流れ出た」ものだからなのだろうと思います。

2017/12/29

しんすけ

人生を踏む長さに比例して面白さが滲みだしてくる本かもしれない。そして、鴎外の現代風訳文は、さらにそれを裏付けてくれるような気がする。最後の最後(12104行)にある下記は、泡沫が人生でもあることを自覚したゲーテの心境なのであろう。/一切の無常なるものは/ただ影像たるに過ぎず。/ゲーテは83歳で亡くなる直前まで『ファウスト』を書き続けている。執筆期間は25年ほどだが、構想から数えると生涯をかけた作品と云える。

2018/02/19

hitotoseno

日本史上屈指の文豪が、ドイツ史上、いや世界史上最高の大作に挑んだ記念碑的著作。これを読めばなぜ鴎外が「舞姫」においてあのような物語を認めたのかいくらか知れるところだろう。悪魔メフィストフェレスに己を売って俗世の快楽と天井の幸福をことごとく求めた魔術師ファウストに対し、太田豊太郎はたかだか黎明期の近代日本における出向官僚に過ぎない。愛しき女の血族を殺してでも愛を求めようとしたファウストに引き換え、かよわきエリスを置き去りにした太田には何の魔力も備わっていない。本書はさしあたり、

2016/03/29

ブロッコ・リー

青空文庫本、通勤電車の中で読み続け、読んでる間は聖霊と王侯貴族と地の底の母達、ワルプルギスの夜に集まる有象無象の者達に囲まれ、ファウストとメフィストフェレスは何処へ? ト書きを読めば大掛かりなオペラの舞台装置が見えて来て、入れ替わり立ち替わり登場する歌い手の様子が楽しい。遠景に響く槌音を聴きながらキーワードを呟くファウスト。暗転の後に響く天上からの歌声、光の束、舞い散る薔薇の花びらの馥郁たる薫り、本当の姿は道化のそれだったメフィストと役者勢揃いでのフィナーレと一大エンターテイメントでした。

2017/06/05

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