ふしぎなお金 (ちくま文庫)
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ふしぎなお金 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
keroppi
「こどもの哲学 大人の絵本」シリーズ3作目。今回はお金がテーマ。赤瀬川さんの「千円札裁判」を思い出すが、お金は凶器でもあり、血液でもあると展開する。その着眼点は面白いのだが、何故か前2作ほどハッとしない。それは、現代がお札でなくキャッシュレスの世界になってきたせいではないかたと思った。今は、お金というものを目にしないことが多いし、触れることも少なくなった。スマホでピッとやるだけで物が買えてしまう。ただ、この本にも「お金はますます見えなくなった」という文もあり、赤瀬川さんは、今を想像していたのかもしれない。
2022/05/15
へくとぱすかる
コートを預けることが、まるで武器をあずけて丸腰になることと、同じ感覚ではないのか、という話からお金の話に自然にシフトしていく。その自然さが絶妙で、「お金とは何か」という、まさに哲学的な議論をすんなり受け入れさせてくれる。サイフからのぞく一万円札の絵がリアルなのは、赤瀬川さんの「千円札裁判」をどうしても連想する。Ⅳ章の、飼い犬のニナの話には、一番びっくりするが、約束手形の「約束」の意味を、しっかり悟ったと思う。そこからお金(コインでもお札でも)の意味にたどりつくには、わずか一歩しかない。入門書としてすごい。
2022/05/18
空猫
『レモンをお金にかえる法』という絵本が分かりやすくて、経済学について初めて読む本には最適だと思っている。本書はもう少し詳しくて、それでいて哲学的でもあり、次のステップに最適だ。…「お金」とは、銃(武器、刀)の、あるいは血のようである…。赤瀬川氏の「子供の哲学 大人の絵本」というシリーズらしい。挿し絵もお洒落だし。続刊もどんどん読むよ。
2022/09/25
takka@乱読
お金=拳銃、お金=血液という発想もなかなか興味深い感性だが、個人的に一番印象に残ったのは、第5章の「悪貨は良貨を駆逐する」である。何事もそうで、時計も名画も骨董も言説も公には質の悪い物が溢れ、本当に価値のある物や本音は出さないというのはまさしくそのとおりだと感じた。お金について考える大学生や大人こそ読みべき絵本として充実した内容だった。
2022/05/13
Inzaghico
第2章の「現金は血液」というのは、たしかにそうだ。どちらも循環させてナンボだが、思わぬきっかけで怪我して出血したり、お金を不覚にもばらまいてしまったりすると、止血したり懐にしまおうとしたりする。お金も血液もごく私的な存在なのだ。お金も血液も「生臭いものでもある」「でも輝いている」。キャッシュレスになって生臭さは遠ざけられた気もするが、ふとした折に現金よりも生臭く感じることがある。お金って業が深い。
2022/07/24
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